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Cloud Service

Azure Data Manager for Energy

石油・ガスなどエネルギー業界のサブサーフェスデータを、業界標準 OSDU 準拠の API で一元管理できるフルマネージドデータプラットフォーム。坑井や地震探査データの取り込み・検索・連携をクラウドで担う。

中級セキュリティ運用上の優秀性信頼性
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.OSDU データプラットフォーム準拠のフルマネージドサービスで、エネルギー業界のデータを標準 API で扱える。
  • 2.取り込み・索引・検索・エンタイトルメントに加え、地震探査や坑井などドメイン別の管理サービス(DDMS)を備える。
  • 3.認証は Microsoft Entra ID、保護はプライベートリンクや顧客管理キー(CMEK)で行う。

解決する課題

エネルギー業界(石油・ガスなど)では、地震探査・坑井・貯留層といった膨大なサブサーフェスデータがベンダー独自フォーマットやサイロに散在しがちです。Azure Data Manager for Energy(ADME)は、業界標準の OSDU データプラットフォームに準拠した形でこれらを一元管理し、相互運用を可能にします。

  • ベンダー独自フォーマットに縛られず、業界標準(OSDU)の API とスキーマでデータを扱いたい
  • 地震探査・坑井・貯留層などのドメイン固有データを、専用の管理サービス越しに統一的に格納・取得したい
  • 大量データを取り込み(ingestion)し、索引・検索できるようにして、探索・分析の前処理を効率化したい
  • データへのアクセスをユーザー/グループ単位で厳密に統制し、法的タグ(legal tags)でコンプライアンス要件を満たしたい
  • 自前で OSDU をデプロイ・運用する負担を避け、フルマネージドでアップグレードや可用性を任せたい

主要概念と用語

  • OSDU データプラットフォーム: The Open Group が策定するエネルギー業界向けのオープンなデータ標準。ADME はこの OSDU を Azure 上でマネージド提供する基盤
  • インスタンス: ADME のデプロイ単位。Azure リソースとして作成し、その中に 1 つ以上のデータパーティションを持つ
  • データパーティション: インスタンス内で論理的に分離されたデータの入れ物。テナントや業務単位でデータを区切る境界
  • OSDU サービス(コア API): 取り込み(Ingestion)、ストレージ、索引・検索(Index/Search)、スキーマ、エンタイトルメント、リーガルなど、OSDU が定める標準 API 群
  • DDMS(Domain Data Management Services): ドメイン別のデータ管理サービス。Seismic(地震探査)、Wellbore(坑井)、Well Delivery、Reservoir(貯留層)、Petrel など、データ種別ごとに最適化された格納・取得を提供
  • エンタイトルメント(Entitlements): ユーザーとグループを管理し、API・データへのアクセス権を制御する OSDU の仕組み
  • ACL(アクセス制御リスト): 個々のデータレコードに対して、閲覧・所有のグループを指定するアクセス制御
  • リーガルタグ(Legal Tags): データの法的・規制上の属性(原産国、機密区分など)を表し、コンプライアンス境界を定義するタグ
OSDU を自前で運用しないための選択肢

OSDU データプラットフォーム自体はオープンソースで自前デプロイも可能ですが、構成要素が多く運用負荷が高くなりがちです。ADME は OSDU の能力を Azure のフルマネージドサービスとして提供し、可用性・アップグレード・基盤運用を任せられます。

仕様・制限・クォータ

  • OSDU 準拠の API: アプリケーションは OSDU 標準の REST API を呼び出してデータの取り込み・検索・取得を行うため、OSDU 互換のツールやワークフローを流用しやすい
  • インスタンスとデータパーティション: 1 つのインスタンス配下に複数のデータパーティションを後から追加でき、テナント/業務単位でデータを論理分離できる
  • 取り込み方式: マニフェスト取り込みや CSV パーサーなど、複数の取り込みワークフローに対応する
  • DDMS の対応ドメイン: Seismic・Wellbore・Well Delivery・Reservoir・Rock and Fluid Samples・Petrel など、ドメインごとに専用サービスが用意される
  • 大容量データ: 地震探査ファイルなど大容量データのアップロードや、SEG-Y から oVDS/ZGY への変換といった処理に対応する
  • リージョン提供状況・インスタンスあたりのデータパーティション数・スループットなどの上限は変動するため、設計時に公式ドキュメントで確認する

内部の仕組み

ADME は、OSDU データプラットフォームのコアサービス群(ストレージ、索引・検索、スキーマ、エンタイトルメント、リーガルなど)と、その上で動く DDMS を、Azure のマネージドリソースとして束ねた構成です。利用側は OSDU 標準の API を呼ぶだけでよく、内部の各サービスの配置やスケールは基盤側が管理します。

データはまず取り込みワークフローを通って投入されます。マニフェスト取り込みでは、データの素性を表すメタデータ(マニフェスト)に従って検証・登録が進み、CSV パーサーでは表形式データを OSDU のレコードへ変換します。登録されたデータは索引化され、検索 API から横断的に問い合わせられるようになります。

アクセス制御は二層で働きます。エンタイトルメントがユーザーとグループ、および API レベルのアクセス権を司り、各データレコードには ACL が付与されて閲覧・所有グループが決まります。さらにリーガルタグがデータの法的属性を表し、原産国制限などのコンプライアンス境界を定義します。これにより、誰がどのデータに触れられるかを業界要件に沿って厳密に統制できます。

ドメイン固有のデータは、対応する DDMS が引き受けます。たとえば地震探査データは Seismic DDMS が、坑井データは Wellbore DDMS が、それぞれのデータモデルに最適化した格納・取得 API を提供します。コアサービスが共通基盤を、DDMS がドメイン特化を担う役割分担です。

エンタイトルメント・ACL・リーガルタグは三位一体

アクセス統制は、ユーザー/グループを束ねるエンタイトルメント、レコード単位のACL、法的属性を表すリーガルタグの三つが噛み合って成立します。データ投入前にグループ設計とリーガルタグ設計を済ませておくと、後からの権限整理が楽になります。

設計パターン / ベストプラクティス

  • データパーティションで境界を切る: テナント・業務・環境(開発/本番)などの単位でデータパーティションを分け、混在を避ける
  • グループ設計を先に固める: エンタイトルメントのグループと ACL の付与方針を投入前に設計し、データごとに閲覧・所有グループが一貫するようにする
  • リーガルタグでコンプライアンスを担保: 原産国・機密区分などをリーガルタグで明示し、規制要件に沿わないデータ流通を防ぐ
  • 取り込みは標準ワークフローに乗せる: マニフェスト取り込みや CSV パーサーなど用意された経路を使い、スキーマ検証を効かせて品質を保つ
  • ドメインごとに DDMS を使い分ける: 地震探査・坑井・貯留層などは対応する DDMS の API を用い、汎用ストレージへ素のファイルを置くだけにしない
  • OSDU 互換性を活かす: OSDU 標準に準拠したツールや既存ワークフローを再利用し、独自実装を最小化する

運用・監視

  • Azure Monitor 連携: OSDU サービスログ、Airflow(取り込みワークフロー)ログ、Elasticsearch(索引・検索)ログを Azure Monitor/Log Analytics へ送って可視化・アラート化できる
  • 監査ログ: 監査ログを有効化し、誰がどのデータにアクセス・操作したかを追跡してコンプライアンスに備える
  • アップグレード設定: マネージドサービスとしてプラットフォームのアップグレードが提供され、適用タイミングなどの設定を管理できる
  • データパーティションの追加運用: 業務拡大に応じてデータパーティションを追加し、初期構成を後から拡張できる
  • ユーザー管理: エンタイトルメントを通じたユーザー/グループの追加・削除を定常運用として整備する

コスト

ADME はインスタンスを稼働させるマネージドプラットフォームの費用が中心になります。OSDU のコアサービスと DDMS をまとめて動かす基盤を提供するため、Event Grid のような純粋な操作数課金ではなく、稼働するインスタンスとデータ量・処理量に応じたコスト構造になります。

項目コストの考え方補足
基盤費用インスタンス稼働に対する費用が中心OSDU コア + DDMS をまとめて動かすマネージド基盤
データ量格納するデータ量が増えるほど増加地震探査など大容量データはストレージ影響が大きい
処理量取り込み・検索・変換などの処理に応じて増加大量取り込みや SEG-Y 変換は処理コストに反映
階層化ワークロードに応じた階層変更が可能な場合がある地震探査ワークロードでアクセス頻度に合わせ階層を見直す
料金は必ず公式で確認

ADME の課金体系・単価・リージョン提供状況は変動します。ここでは定性的な考え方のみを示しているため、見積もりの際は必ず公式の料金ページと価格計算ツールで最新の数値を確認してください。

セキュリティ

  • 認証は Microsoft Entra ID: API へのアクセスは Entra ID によるトークン認証で行い、エンタイトルメントと組み合わせて認可を制御する
  • エンタイトルメント/ACL/リーガルタグ: ユーザー・グループ単位の権限、レコード単位の ACL、法的属性のリーガルタグでデータアクセスを多層に統制する
  • プライベートリンク: プライベートエンドポイント経由で接続し、パブリックインターネットを介さない閉域アクセスを構成できる
  • 顧客管理キー(CMEK): 保存データの暗号化に顧客が管理する鍵を使用し、鍵のライフサイクルを自社で握れる
  • マネージド ID: 関連リソースへのアクセスにマネージド ID を用い、資格情報のハードコードを避ける
  • Lockbox/監査ログ: Customer Lockbox でサポート時のデータアクセスを承認制にし、監査ログで操作を追跡する
アンチパターン

リーザルタグや ACL を設計せずにデータを投入し、後から権限を付け直すのは危険です。原産国制限などの規制を満たせないデータ流通が発生し得ます。グループ・ACL・リーガルタグの設計を投入前に確定し、閉域が必要な環境ではプライベートリンクCMEKを初期から有効化してください。

関連サービス・比較

ADME は、エネルギー業界向けに OSDU をマネージド提供する点が最大の特徴です。汎用のオブジェクトストレージである Azure Blob Storage に素のファイルを置くだけの構成と比べると、業界標準スキーマ・検索・権限・コンプライアンスまで含めて扱える点が大きく異なります。

観点Azure Data Manager for EnergyAzure Blob Storage
位置づけOSDU 準拠のエネルギー業界データ基盤汎用オブジェクトストレージ
データモデルOSDU 標準スキーマと DDMS任意のファイル(モデルは利用側で実装)
検索索引・検索 API を標準提供なし(別途検索基盤が必要)
アクセス制御エンタイトルメント/ACL/リーガルタグRBAC/SAS/コンテナ単位の制御
業界適合石油・ガスのサブサーフェスに特化汎用(業界非依存)
相互運用OSDU 互換ツールを流用可能独自実装に依存
他クラウドにも OSDU マネージド提供がある

OSDU データプラットフォームは業界標準のため、各クラウドにマネージド提供があります。Google Cloud には Energy Data Services 系、AWS には OSDU Data Platform 向けのソリューションが存在します。ADME はその Azure 版にあたり、Entra ID やプライベートリンクなど Azure のセキュリティ機構と統合される点が特徴です。

ハンズオン / CLI例

# リソースグループを作成
az group create --name demo-rg --location japaneast

# 利用可能なプロバイダー/リソースの登録状況を確認(初回はプロバイダー登録が必要なことがある)
az provider register --namespace Microsoft.OpenEnergyPlatform

# Azure Data Manager for Energy のインスタンスは
# Azure CLI 単体ではなく ARM/Bicep テンプレートやポータルから作成するのが一般的。
# ここでは Bicep テンプレートをデプロイする例を示す(adme.bicep に定義を記述)。
az deployment group create \
  --resource-group demo-rg \
  --template-file adme.bicep \
  --parameters instanceName=demo-adme location=japaneast

# 作成済みリソース(インスタンス)の一覧を確認
az resource list \
  --resource-group demo-rg \
  --resource-type "Microsoft.OpenEnergyPlatform/energyServices" \
  -o table

# 以降のデータ取り込み・検索・ユーザー管理は OSDU 標準の REST API を
# Microsoft Entra ID で取得したアクセストークンを付けて呼び出す。

Azure Service

Azure Data Manager for Energyを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

アプリ統合

比較で見る軸

クラウド: Azure / カテゴリ: アプリ統合 / 難易度: intermediate

導入後に効く点

取り込み・索引・検索・エンタイトルメントに加え、地震探査や坑井などドメイン別の管理サービス(DDMS)を備える。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Azure
カテゴリ
アプリ統合
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
security / operational / reliability

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「アプリ統合 / security」に近いか確認する。
  • 強みである「OSDU データプラットフォーム準拠のフルマネージドサービスで、エネルギー業界のデータを標準 API で扱える。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

アプリ統合securityoperationalreliability