TL

Cloud Service

Azure Arc

オンプレや他クラウドのサーバー・Kubernetes・データベースを Azure に投影し、Azure のガバナンスと管理を一元適用するハイブリッド基盤。AWS の Systems Manager や EKS Anywhere に近い。

中級運用上の優秀性セキュリティ
最終更新: 2026-06-14公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.Azure 外の資源を Azure リソースとして投影し一元管理するハイブリッド基盤。
  • 2.Policy・RBAC・Defender・Monitor を場所を問わず同じ仕組みで適用できる。
  • 3.AWS の Systems Manager や EKS Anywhere に近い位置づけ。

解決する課題

  • オンプレミスや他クラウドにあるサーバー・Kubernetes を、Azure と同じ管理画面・同じ仕組みで統制したい
  • 環境ごとにバラバラなガバナンス(パッチ・構成・コンプライアンス)を、Azure Policy で横断的に強制したい
  • アクセス制御や監査を、場所を問わず Entra ID 認証 + Azure RBAC に統一したい
  • セキュリティ監視や脆弱性評価を、クラウド内外の資源に同じ Defender / Monitor で当てたい
  • 一部の Azure データサービス(SQL Managed Instance など)を、規制やレイテンシの都合でオンプレや他クラウド上で動かしたい

主要概念と用語

  • Azure Arc: Azure 外(オンプレ・他クラウド・エッジ)の資源を Azure Resource Manager(ARM)の管理対象リソースとして投影し、Azure の管理機能を適用できるようにするプラットフォーム
  • Arc 対応サーバー(Arc-enabled servers): 物理/仮想マシンに Connected Machine エージェントを入れ、Azure リソースとして登録したもの。Policy・拡張機能・Monitor・Defender の対象になる
  • Arc 対応 Kubernetes(Arc-enabled Kubernetes): 任意の CNCF 準拠 Kubernetes クラスターを Azure に接続したもの。**GitOps(Flux)**による構成配布や拡張機能の展開ができる
  • Arc 対応データサービス(Arc-enabled data services): Arc 対応 Kubernetes 上で Azure SQL Managed InstancePostgreSql を動かす仕組み。クラウド外でもマネージドに近い運用を実現
  • 拡張機能(Extensions): Arc 対応リソースへ機能を後付けする仕組み。Monitor エージェント、Defender、カスタムスクリプトなどを配布する
  • 接続方式(Connectivity): 完全接続のほか、送信のみ・プロキシ経由・プライベートリンクでの接続に対応。エージェントは原則 アウトバウンド HTTPS で Azure と通信する
まず投影してから統治する

Arc の本質は「Azure 外の資源を Azure リソースとして見えるようにする」ことです。リソースとして登録されれば、あとは Policy・RBAC・タグ・Defender・Monitor といった既存の Azure 管理機能をそのまま再利用できます。新しい管理面を覚え直す必要はありません。

仕様・制限・クォータ

  • エージェントは **アウトバウンド HTTPS(443)**で Azure に接続する。インバウンドの口を開ける必要はなく、必要な FQDN への送信許可とプロキシ/プライベートリンク構成が前提になる
  • Arc 対応サーバーへのエージェント導入と接続自体は追加料金なしで利用でき、課金は上に乗せる機能(後述)側で発生する
  • Arc 対応 Kubernetes は CNCF 準拠の任意のディストリビューションを対象とし、特定ベンダーに縛られない
  • リソースはリソースグループとリージョンに属する。Arc リソースのメタデータ管理リージョンはサポート対象が限られるため、設計時に確認する
  • Arc 経由でもデータプレーンの実体はオンプレ/他クラウド側にある。Azure 側が握るのは管理面(コントロールプレーン)で、ネットワーク遮断時のローカル動作可否は機能ごとに異なる

内部の仕組み

Arc 対応サーバーでは、対象マシンに Connected Machine エージェントを導入します。エージェントはアウトバウンド HTTPS で Azure に接続し、そのマシンを ARM 上の 1 リソースとして登録します。登録されたリソースには Azure 側から拡張機能を配布でき、Monitor エージェントや Defender、構成管理などが後付けで動きます。

認証は Entra ID に統合され、各リソースには Arc のシステム割り当てマネージド ID が付与されます。これにより、オンプレのサーバーであっても Key Vault などへ資格情報なしでアクセスでき、認可は Azure RBAC に委ねられます。

Arc 対応 Kubernetes では、クラスターに**エージェント群(Pod)**をデプロイして Azure と接続します。**GitOps(Flux)**を有効にすると、Git リポジトリの宣言的構成がクラスターへ継続的に同期され、複数クラスターへ同じ構成を一括配布できます。

  • Azure が握るのは管理面で、ワークロードの実体は接続先環境に残る
  • Policy 評価・Defender 評価・Monitor 収集は、登録済みリソースに対してネイティブの Azure リソースと同じ経路で行われる
  • 接続が切れた間も、エージェントが入った環境ではローカルのワークロードは動き続ける(管理面の更新が止まるだけ)

設計パターン / ベストプラクティス

  • ガバナンスの統一: Azure・オンプレ・他クラウドを Arc で投影し、Azure Policy でコンプライアンスを横断強制する。準拠状態を 1 つのダッシュボードで把握する
  • 資格情報レス化: Arc のマネージド ID + Key Vault で、オンプレ サーバーからもシークレットなしで認証する
  • Kubernetes の構成統一: 多数のクラスターへ **GitOps(Flux)**で同じアドオン・ポリシーを配布し、構成ドリフトを抑える
  • 段階導入: まず Arc 対応サーバーで在庫把握と Defender/Monitor を当て、次に Policy 強制、最後にデータサービスや GitOps へ広げる
  • タグ運用の統一: Arc リソースにも Azure と同じタグ体系を付与し、コスト配賦と棚卸しを一元化する

運用・監視

  • エージェントの接続状態を監視する。最後に接続した時刻が古いリソースは、ネットワーク・プロキシ・証明書を順に確認する
  • Azure Monitor / Log Analytics を Arc リソースにも拡張し、オンプレ サーバーの OS 内部指標やログを収集する
  • Update Manager で Arc 対応サーバーのパッチ評価・適用をクラウド内外まとめて運用する
  • Azure Policy のコンプライアンス状態を定期的に確認し、非準拠リソースを是正する
  • エージェントの自動アップグレード方針を決め、バージョン乖離による不具合を防ぐ
接続断でも実体は動く

Arc が止まってもワークロードが落ちるわけではありません。Azure との接続が切れると、止まるのは管理面(Policy 評価・構成同期・監視データの送信)であって、オンプレ側のアプリやコンテナはローカルで動き続けます。逆に言えば、接続断中はガバナンスが効かない時間が生じる点を運用設計で見込む必要があります。

コスト

Arc 対応サーバーの接続そのものは追加料金なしで使えるのが基本です。費用は、その上で利用する機能側で発生します。具体的には、Defender for Cloud による保護、Azure Monitor のログ取り込み、Update Manager の一部機能、Arc 対応データサービスの実行などが課金対象になります。つまり「つなぐだけ」なら無償で在庫把握とガバナンスの土台を作り、付加機能を当てた分だけ課金される、という考え方です。変動する単価は公式の料金ページで都度確認してください。

要素課金の有無ポイント
サーバーの Arc 接続原則なし在庫把握・Policy・タグの土台は無償で作れる
Defender for Cloud 保護あり保護対象リソース数で課金される
Azure Monitor 連携ありログ取り込み量・保持に応じて課金
Arc 対応データサービスあり稼働するインスタンスの規模に応じて課金

セキュリティ

  • 認証は Entra ID に統合され、Arc リソースのアクセス制御は Azure RBAC で一元化される。オンプレ サーバーにも同じ認可モデルを適用できる
  • 各 Arc リソースにはマネージド ID が付くため、オンプレからも資格情報をハードコードせず Key Vault などへ認証できる
  • 通信はアウトバウンド HTTPS のみで、インバウンドの穴を開けない。閉域要件にはプライベートリンクで対応する
  • Microsoft Defender for Cloud を Arc 対応サーバー/Kubernetes に当て、クラウド外資源にも脆弱性評価・脅威検知を効かせる
  • エージェント導入や登録の権限は最小権限で配り、誰がどの環境を Arc 化できるかを統制する
アンチパターン

Arc で投影したオンプレ資源をAzure と別ルールで放置するのは本末転倒です。せっかく ARM リソースになっても、Policy も Defender も当てなければ「見えるだけ」で統治されません。投影したら既存の Azure ガバナンス(Policy・RBAC・Defender)を必ず適用範囲に含めることが前提です。

Well-Architected の観点

  • オペレーショナル エクセレンス: クラウド内外の資源を 1 つの管理面(ARM・Policy・Monitor)に集約し、環境ごとに分かれた運用手順を統一できる。構成は GitOps や IaC で宣言的に管理し、ドリフトを抑える
  • セキュリティ: 認証を Entra ID、認可を Azure RBAC に統一し、オンプレ サーバーにもマネージド ID と Defender を適用。資格情報レス化と横断的な脅威検知で、攻撃面と管理の分断を同時に減らせる

試験で問われるポイント

頻出
  • Arc は Azure 外の資源を ARM リソースとして投影し、Policy・RBAC・Defender・Monitor といった既存の Azure 管理機能を再利用する仕組みであること
  • 対象は主にサーバー・Kubernetes・データサービスの 3 系統で、それぞれ専用のエージェント/接続方式がある
  • エージェントはアウトバウンド HTTPS で接続し、インバウンドの口を開けない(閉域はプライベートリンク)
  • Arc リソースにはマネージド ID が付き、オンプレからも資格情報なしで Key Vault 等へ認証できること
  • 接続が切れてもローカルのワークロードは動き続け、止まるのは管理面であること
  • オンプレや他クラウドへAzure Policy を横断適用してコンプライアンスを強制するシナリオでの第一候補であること

関連サービス・比較

Arc は AWS で言えば、ハイブリッド管理の Systems Manager と、オンプレ Kubernetes の EKS Anywhere を合わせたような位置づけです。Azure の管理面をそのままクラウド外へ延ばす点が特徴です。

観点Azure ArcAWS の相当機能
ハイブリッドのサーバー管理Arc 対応サーバーSystems Manager(ハイブリッドアクティベーション)
クラウド外の KubernetesArc 対応 KubernetesEKS Anywhere
横断的なガバナンス強制Azure Policy(Arc 経由)AWS Config / SCP の組み合わせ
認証・認可の基盤Entra ID + Azure RBACAWS IAM
クラウド外のセキュリティ監視Defender for Cloud(Arc 経由)Security Hub / Inspector
管理面への投影単位ARM リソースとして登録マネージドインスタンスとして登録
AWS との対応のキモ

AWS で Systems Manager にオンプレ サーバーをハイブリッド登録し、一元的にパッチ・在庫・コンプライアンスを当てるのと同じ発想です。Azure では Arc で ARM リソースに投影し、Policy・RBAC・Defender・Monitor をそのまま適用します。Kubernetes 面は EKS Anywhere に近い役割を Arc 対応 Kubernetes が担います。

ハンズオン / CLI例

# Arc 用の拡張機能をインストール
az extension add --name connectedmachine

# オンプレ/他クラウドのサーバーを Arc に接続(対象マシン上で実行)
# 事前に Connected Machine エージェントを導入しておく
azcmagent connect \
  --resource-group demo-rg \
  --tenant-id "<tenant-id>" \
  --location japaneast \
  --subscription-id "<sub-id>"

# 接続済みの Arc サーバー一覧を確認
az connectedmachine list \
  --resource-group demo-rg \
  --query "[].{name:name, status:status, os:osName}" -o table

# Kubernetes クラスターを Arc に接続(クラスターへ接続できる端末で実行)
az extension add --name connectedk8s
az connectedk8s connect \
  --name demo-arc-k8s \
  --resource-group demo-rg \
  --location japaneast

# Arc 対応 Kubernetes に GitOps(Flux)構成を割り当て
az k8s-configuration flux create \
  --name app-config \
  --cluster-name demo-arc-k8s \
  --resource-group demo-rg \
  --cluster-type connectedClusters \
  --url "https://github.com/<org>/<repo>" \
  --branch main \
  --kustomization name=app path=./deploy prune=true

Azure Service

Azure Arcを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

管理・ガバナンス

比較で見る軸

クラウド: Azure / カテゴリ: 管理・ガバナンス / 難易度: intermediate

導入後に効く点

Policy・RBAC・Defender・Monitor を場所を問わず同じ仕組みで適用できる。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Azure
カテゴリ
管理・ガバナンス
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / security

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「管理・ガバナンス / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「Azure 外の資源を Azure リソースとして投影し一元管理するハイブリッド基盤。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

管理・ガバナンスoperationalsecurity