Cloud Service
Azure Managed Grafana
Grafana のダッシュボードを Microsoft が運用するフルマネージドで提供。バージョン更新やスケール、可用性の面倒を見ずに、Azure Monitor や Prometheus を横断する可視化基盤をすぐ持てる。AWS の Amazon Managed Grafana に相当。
- 1.オープンソースの Grafana を Microsoft 運用のマネージドで提供する可視化サービス。
- 2.Azure Monitor や Managed Prometheus を既定のデータソースに横断ダッシュボードを作れる。
- 3.認証は Microsoft Entra ID、データ取得はマネージド ID で完結できる。
解決する課題
Grafana は監視ダッシュボードの定番ですが、自前で運用するとバージョン更新・スケール・可用性・プラグイン管理を自分で抱えることになります。Azure Managed Grafana は、その運用負荷を Microsoft 側に寄せたうえで、Azure のデータソースや認証と最初からつながった状態で使えます。
- Grafana 本体のアップグレードや可用性確保を任せたい
- Azure Monitor や Prometheus など複数のデータソースを 1 枚のダッシュボードに重ねたい
- ログインや権限を Microsoft Entra ID と Azure RBAC に統一したい
- データソースへのアクセスを資格情報のハードコードなしで安全につなぎたい
オープンソースの Grafana と同じ操作感・同じダッシュボード資産を保ちながら、運用と Azure 連携の部分だけマネージドに置き換えるイメージです。AWS でいえば Amazon Managed Grafana に相当します。
主要概念と用語
- Grafana インスタンス(ワークスペース): Managed Grafana の中核リソース。専用のエンドポイント URL を持ち、ダッシュボード・データソース・ユーザー権限の境界になる
- データソース: 可視化するデータの取得先。Azure Monitor、Azure Monitor Managed Service for Prometheus、Azure Data Explorer などを設定でき、外部の Prometheus などもつなげられる
- ダッシュボード / パネル: 時系列グラフや表などの可視化単位。JSON として保存・エクスポートでき、オープンソース Grafana と互換性がある
- Microsoft Entra ID 認証: サインインは Entra ID に統合され、ユーザーやグループ単位でアクセスを割り当てる
- Grafana ロール(Viewer / Editor / Admin): Grafana 内での権限。Azure RBAC のロール割り当てを通じて Entra ID のユーザー/グループに対応づける
- マネージド ID: インスタンスに割り当てる ID。これに Azure Monitor などの読み取り権限を与えると、データソース接続が資格情報なしで成立する
- プラグイン: パネルやデータソースを拡張する追加機能。マネージドな範囲でサポートされるものを利用する
- ティア(プラン): 機能や可用性の水準が異なる提供区分。可用性 SLA やゾーン冗長の扱いがプランで変わる
仕様・制限・クォータ
- インスタンスはリージョン リソースとして作成する。配置リージョンはダッシュボードの応答性や近接データソースとの関係で選ぶ
- アップグレードは Microsoft が管理し、Grafana のメジャー/マイナー更新やセキュリティ修正が適用される。利用者は本体パッチ作業から解放される
- プラグインは利用できる範囲が定義されている。任意の野良プラグインを無制限に持ち込めるわけではなく、サポート対象を前提に設計する
- 1 つのサブスクリプション/リージョンあたりに作成できるインスタンス数や、ダッシュボード・データソースの規模には上限がある。大規模利用ではクォータを事前確認する
- 可用性 SLA とゾーン冗長の扱いはプラン(ティア)に依存する。具体的な数値や対応リージョンは変動するため公式情報で確認する
- API キーやサービス アカウントによる自動化に対応するが、提供範囲はバージョンにより異なる
セルフホストの Grafana 感覚で任意のプラグインを入れる前提で設計すると、マネージドのサポート範囲外でつまずきます。 利用したい可視化やデータソースが対応プラグインで満たせるかを、設計の早い段階で確認しましょう。
内部の仕組み
Managed Grafana は、オープンソースの Grafana エンジンを Microsoft がホストし、その前段に Microsoft Entra ID による認証を組み込んだ構成です。利用者は専用エンドポイントにブラウザでアクセスし、Entra ID でサインインします。
データの流れは、Grafana がデータソース(Azure Monitor、Managed Prometheus など)にクエリを発行し、結果をパネルに描画する形です。このとき、インスタンスに割り当てたマネージド ID がデータソース側の読み取り権限を持っていれば、接続文字列やトークンをダッシュボードに埋め込まずに済みます。Grafana 本体のバージョン更新・スケール・基盤の可用性確保はサービス側で担われ、利用者はダッシュボードとデータソースの設定に集中できます。
設計パターン / ベストプラクティス
- 既存ダッシュボードの移行: オープンソース Grafana の JSON をそのまま取り込み、データソース参照だけ Azure 向けに付け替える
- 横断可視化のハブ化: Azure Monitor メトリクス、Managed Prometheus、ログ由来の指標を 1 つのインスタンスに集約し、チーム共通の監視ハブにする
- 権限は Entra グループで管理: 個人ではなくグループに Grafana ロールを割り当て、入退室をグループ メンバーシップで統制する
- データ取得はマネージド ID 経由: データソースの資格情報をダッシュボードや変数に直接書かない
- 環境分離: 本番と検証でインスタンスやフォルダーを分け、誤操作の影響範囲を限定する
運用・監視
- ダッシュボードにデータが出ない → マネージド ID へのロール割り当て(対象スコープへの監視読み取り権限)と、データソース設定を確認する
- ログインできない → Entra ID 側のアクセス割り当てと、対応する Grafana ロールが付与されているかを確認する
- 表示が重い → クエリの時間範囲・解像度や、パネル数・リフレッシュ間隔を見直す
- 監査が必要 → コントロール プレーン操作は Azure のアクティビティ ログ、データソース側の利用は各サービスのログで追跡する
コスト
課金は主に**稼働するインスタンス(時間課金)と選択したプラン(ティア)**で発生します。ダッシュボードを多用するチームで 1 インスタンスを共有すると、1 人あたりのコスト効率が上がります。
| 課金要素 | 主な単位 | コスト最適化のポイント |
|---|---|---|
| インスタンス稼働 | 稼働時間ベース | 用途ごとに乱立させず共有インスタンスに集約 |
| プラン/ティア | 可用性や機能水準で区分 | 必要な可用性に見合うプランを選ぶ |
| データソース側の費用 | クエリ/取り込みは各サービス課金 | 重いクエリやリフレッシュ頻度を抑える |
ダッシュボードを見るユーザーが増えても、インスタンス課金は基本的に稼働時間ベースです。 チームで 1 つのインスタンスを共有するほど、1 人あたりのコストは下がりやすくなります。
セキュリティ
- 認証は Microsoft Entra ID に統合され、サインインを一元管理できる
- インスタンス内の権限は Grafana ロール(Viewer / Editor / Admin) を Azure RBAC で Entra のユーザー/グループに割り当てる
- データソース接続はマネージド ID を使い、資格情報のハードコードを避ける
- データは保存時に暗号化される。ネットワーク制限の要件があればプライベート接続の選択肢を検討する
データソースの接続文字列やトークンをダッシュボード変数や設定に直接書き込むのは NG です。 漏えいや権限過多の原因になります。 マネージド ID と最小権限のロール割り当てで接続しましょう。
関連サービス・比較
セルフホストの Grafana(自前で VM やコンテナに立てる構成)と比べると、運用責任の所在が大きく変わります。
| 観点 | Azure Managed Grafana | セルフホスト Grafana |
|---|---|---|
| 運用責任 | 本体運用は Microsoft | アップグレードや可用性も自分で担当 |
| 認証 | Entra ID 統合が既定 | 自前で SSO 連携を構成 |
| Azure 連携 | Azure Monitor やマネージド ID と密結合 | 手動でデータソースや資格情報を設定 |
| プラグイン自由度 | サポート範囲内 | 任意に導入できるが管理も自前 |
| 可用性 | プランに応じた SLA | 構成と運用次第 |
ハンズオン / CLI例
# Managed Grafana 拡張を追加(初回のみ)
az extension add --name amg
# Grafana インスタンスを作成(システム割り当てマネージド ID 付き)
az grafana create \
--name demo-grafana \
--resource-group demo-rg \
--location japaneast
# 作成したインスタンスのマネージド ID(principalId)を取得
az grafana show \
--name demo-grafana \
--resource-group demo-rg \
--query "identity.principalId" -o tsv
# 取得した principalId に、対象スコープの監視読み取り権限を付与
az role assignment create \
--assignee <principal-id> \
--role "Monitoring Reader" \
--scope "/subscriptions/<sub-id>/resourceGroups/demo-rg"
# エンドポイント URL を確認してブラウザで開く
az grafana show \
--name demo-grafana \
--resource-group demo-rg \
--query "properties.endpoint" -o tsv
Azure Service
Azure Managed Grafanaを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
監視・オブザーバビリティ
比較で見る軸
クラウド: Azure / カテゴリ: 監視・オブザーバビリティ / 難易度: intermediate
導入後に効く点
Azure Monitor や Managed Prometheus を既定のデータソースに横断ダッシュボードを作れる。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- Azure
- カテゴリ
- 監視・オブザーバビリティ
- 難易度
- intermediate
- 関連資格
- —
- 設計柱
- operational / reliability / security
判断チェックリスト
- 自社の用途が「監視・オブザーバビリティ / operational」に近いか確認する。
- 強みである「オープンソースの Grafana を Microsoft 運用のマネージドで提供する可視化サービス。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。