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Azure Monitor Workbooks

メトリクスとログを一枚のキャンバスに束ね、対話的なレポートやダッシュボードを作れる可視化ツール。障害調査や運用報告を再利用可能な形に標準化できる。AWS の CloudWatch Dashboards に近い位置づけ。

中級運用上の優秀性パフォーマンス効率
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.メトリクス・ログ・パラメーターを組み合わせ対話的なレポートを作る可視化ツール。
  • 2.テンプレートとして共有・再利用でき、障害調査や運用報告を標準化できる。
  • 3.AWS の CloudWatch Dashboards に近いが、KQL とパラメーター連動で表現力が高い。

解決する課題

メトリクスは Metrics エクスプローラー、ログは Log Analytics、と画面が分かれていると、障害調査のたびに複数の画面を行き来し、見たい切り口を毎回作り直すことになります。Workbooks(ブック)は、これらを 1 つのキャンバスに束ね、パラメーターで切り替えられる対話的なレポートとして固定化します。

  • メトリクスとログを1 つの画面にまとめて見たい
  • 調査の手順や切り口を再利用可能なテンプレートとして残したい
  • リージョンや環境などをパラメーターで切り替えながら掘り下げたい
  • 運用報告やトラブルシュートの手順を標準化し、属人化を防ぎたい

Workbooks は Azure Monitor の可視化機能の一つで、AWS でいえば CloudWatch Dashboards に近い位置づけです。ただし、KQL クエリやパラメーター連動による絞り込みを組み合わせられる点で、静的なダッシュボードより対話的なレポート寄りの性格を持ちます。

主要概念と用語

  • ブック(Workbook): 複数のクエリ・可視化・テキストを 1 つにまとめた対話的なドキュメント。保存して共有・再利用できる
  • ステップ(アイテム): ブックを構成する単位。テキスト、クエリ、メトリクス、パラメーター、リンクなどの種類がある
  • データソース: ステップが参照する情報源。Logs(Log Analytics ワークスペース)、Metrics、Azure Resource Graph、アラート、Azure Resource Manager など複数を 1 つのブック内で混在できる
  • パラメーター: ブック上部などに置く入力値。時間範囲・サブスクリプション・リソース・しきい値などを変数化し、各ステップに差し込んでドリルダウンを実現する
  • 可視化(Visualization): クエリ結果の表示形式。グリッド(表)、グラフ、時系列、タイル、ツリーマップ、グラフ(ノード/エッジ)などを選べる
  • テンプレート: 共有用に作り込んだブックの雛形。Azure 提供のギャラリーや組織内で配布し、使う側はパラメーターを変えて再利用する
  • ギャラリー: リソースの種類ごとに用意されたブックの一覧画面。多くのサービスに既製ブックが用意されている

仕様・制限・クォータ

  • ブック自体は Azure リソースとして保存される(共有ブック)。リソース グループに置かれ、Azure RBAC とタグ付けの対象になる。個人スコープの「マイ ブック」として手元にだけ保存することもできる
  • ログ系ステップは Log Analytics ワークスペースや Application Insights を参照し、クエリは KQL で記述する
  • メトリクス系ステップは Azure Monitor のプラットフォーム メトリクスやカスタム メトリクスを参照する
  • 1 つのブックに複数のデータソースを混在でき、Logs・Metrics・Resource Graph・アラートなどを同居させられる
  • ブックの定義は内部的に JSON で保持され、ARM テンプレートとしてコード化・デプロイできる
  • 表示するデータの取得自体は、Log Analytics のクエリ課金やメトリクスの利用に従う。1 ブックあたりのステップ数など細かな上限値は変動するため、要件に直結する場合は公式ドキュメントで最新値を確認すること

内部の仕組み

ブックは「ステップの並び」を JSON で記述したドキュメントです。各ステップは自身のデータソースに対してクエリを発行し、結果を指定の可視化で描画します。ログ系ステップなら Log Analytics や Application Insights に KQL を投げ、メトリクス系ステップなら Azure Monitor のメトリクス ストアを参照します。

パラメーターは、この仕組みを対話的にする中核です。ブック上部のパラメーターで選んだ値(時間範囲・リソース・しきい値など)が、後続ステップのクエリへ文字列展開で差し込まれます。あるステップの選択結果を次のステップのパラメーターにすることで、表をクリックして詳細へ掘り下げるドリルダウンも組めます。

共有ブックは Azure リソースとして保存されるため、保存・更新は通常のリソース操作として扱われ、定義は ARM テンプレート化してリポジトリで管理できます。

パラメーターでまず時間範囲を変数化

最初に時間範囲パラメーターを置き、各ログ ステップへ差し込むのが定石です。ステップごとに時間条件を書かずに済み、画面上の 1 操作で全体の対象期間を切り替えられます。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 既製ブックを起点にする: 多くのサービスにギャラリーの既製ブックがある。ゼロから作らず、近いものを複製して調整する
  • パラメーター駆動で汎用化: サブスクリプションやリソースを直書きせず、パラメーターで切り替えられるようにして使い回す
  • ドリルダウン設計: 概況の表から個別リソースの詳細へ、表のクリックを次ステップのパラメーターに連動させて掘り下げ動線を作る
  • テンプレートとして配布: 障害対応の定番調査をテンプレート化し、チームで同じ手順・同じ画面を共有する
  • コード化して管理: ブック定義を ARM テンプレートにエクスポートし、環境間で同一のブックをデプロイする

運用・監視

  • データが出ない → ログ ステップが参照する Log Analytics ワークスペースや診断設定が正しいかを確認する。元データが集約されていなければブックにも出ない
  • 他者に見えない → 共有ブックは Azure リソースなので、閲覧者にブックと参照先データへの RBAC があるかを確認する
  • 重い → 広い時間範囲やフルテキストの広範な検索を避け、各ステップの KQL を時間範囲と集計で絞る
  • 量産・標準化したい → 定番ブックは ARM テンプレート化し、デプロイ パイプラインで各サブスクリプションへ展開する

コスト

ブックという機能自体に固有の利用料はかかりません。コストが発生するのは、ブックが描画のために裏で実行するデータ取得の側です。

コストの源発生の仕方最適化のポイント
ログ クエリLog Analytics のプランに応じた走査・取り込みに従う時間範囲と集計で走査量を抑える
メトリクス参照メトリクスの利用に従う必要な系列に絞って表示する
ブックの保存共有ブックはリソースとして保存原則として保存自体は軽微
重いクエリの貼りすぎに注意

1 ページに広い時間範囲のログ ステップを大量に並べると、開くたびに重いクエリが一斉に走り、表示の遅さと Log Analytics 側のコストの両方に響きます。ステップごとに時間範囲と集計で絞るのが基本です。

セキュリティ

  • 共有ブックへのアクセスは Microsoft Entra ID と Azure RBAC で制御する。ブックの閲覧・編集の権限と、参照先データへの権限は別々に効く
  • ブックが表示できる範囲は、見る人が参照先データに持つ権限の範囲内に収まる。権限のないデータはブック越しでも見えない
  • 機密データを含むワークスペースを参照するブックは、ブックの配置先リソース グループと参照先双方の RBAC を併せて設計する
  • ブック定義(JSON / ARM テンプレート)に接続文字列などの機密値を直接埋め込まない。リソース ID とパラメーターで参照する

関連サービス・比較

Azure 内での代表的な対比は、固定レイアウトの Azure ダッシュボードです。ダッシュボードはタイルを並べた共有ボード向き、Workbooks はパラメーターで掘り下げる対話的レポート向き、という住み分けになります。

観点Azure Monitor WorkbooksAzure ダッシュボード
主な用途対話的なレポート・調査固定レイアウトの状況ボード
対話性パラメーターで切り替え・ドリルダウン基本は固定のタイル表示
データソースLogs/Metrics/Resource Graph など混在主にメトリクスとピン留めタイル
クエリKQL を直接記述できるピン留めや限定的な編集が中心
再利用テンプレートとして配布共有ダッシュボードとして共有
AWS の近い概念CloudWatch Dashboards に近いCloudWatch Dashboards に近い

ハンズオン / CLI例

# ギャラリーや既製ブックは主にポータルで作成・編集する。
# 共有ブックはリソースとして扱えるため、一覧や ARM 連携が可能。

# サブスクリプション内のブック(リソース)を一覧表示
az resource list \
  --resource-type "microsoft.insights/workbooks" \
  --query "[].{name:name, rg:resourceGroup, location:location}" \
  -o table

# 既存ブックの定義(JSON)を取得して内容を確認・バックアップ
az resource show \
  --resource-group demo-rg \
  --resource-type "microsoft.insights/workbooks" \
  --name <workbook-resource-name> \
  --query "properties" -o json

# ARM テンプレート化したブックを環境へデプロイ(テンプレートはポータルのギャラリー編集からエクスポート)
az deployment group create \
  --resource-group demo-rg \
  --template-file workbook.template.json \
  --parameters workspaceResourceId="/subscriptions/<sub-id>/resourceGroups/demo-rg/providers/Microsoft.OperationalInsights/workspaces/demo-law"

Azure Service

Azure Monitor Workbooksを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

監視・オブザーバビリティ

比較で見る軸

クラウド: Azure / カテゴリ: 監視・オブザーバビリティ / 難易度: intermediate

導入後に効く点

テンプレートとして共有・再利用でき、障害調査や運用報告を標準化できる。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Azure
カテゴリ
監視・オブザーバビリティ
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / performance

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「監視・オブザーバビリティ / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「メトリクス・ログ・パラメーターを組み合わせ対話的なレポートを作る可視化ツール。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

監視・オブザーバビリティoperationalperformance