TL

Cloud Service

Azure Internet Analyzer

実利用者のブラウザから複数エンドポイントへ計測を流し、CDN 切り替えやリージョン移行が体感速度にどう効くかを切り替え前に実証。クライアント側の RUM 型ネットワーク計測サービス。

中級パフォーマンス効率運用上の優秀性
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.実利用者のブラウザに計測用 JavaScript を埋め込み、複数エンドポイントへの体感性能を A/B で比較する。
  • 2.CDN 移行・リージョン移行・オンプレからクラウドへの移行など、切り替えの判断を実データで裏づける。
  • 3.経路に介在せず純粋に計測する。世界中の実ユーザー分布を反映したレイテンシ比較が得られる。

解決する課題

  • CDN やリージョン、配信構成を切り替えたいが、本当に速くなるのかを本番投入前に確かめたい
  • 合成監視(特定地点からの定点観測)では、世界中に散らばる実ユーザーが体感する速度まではわからない
  • 「東京リージョンへ寄せるべきか」「別の CDN のほうが速いか」を、実利用者の分布に基づく実測データで意思決定したい
  • 移行や構成変更の効果を定量的に示し、関係者に納得感のある根拠を提示したい

主要概念と用語

  • Internet Analyzer: Web ページに埋め込んだ計測用 JavaScript で、実利用者のブラウザから複数エンドポイントへ計測を流し、体感ネットワーク性能を比較するサービス
  • テスト(Test): 何と何を比較するかを定義する単位。比較対象のエンドポイント群とサンプリング条件をまとめる
  • エンドポイント: 計測先の URL/ホスト。現行構成・移行先候補・別 CDN・別リージョンなどを並べ、相対的に比較する
  • クライアント側計測(RUM 型): 実利用者の端末・回線・地理から計測するため、定点観測の合成監視と違い実際のユーザー体験を反映する
  • 計測スクリプト: 各エンドポイントへ小さなリソースを取得しに行き、応答までの時間などを測ってバックエンドへ送る軽量な JavaScript
  • A/B(プリファレンス)比較: 同一ユーザーから複数候補へ計測し、どちらが速いかという相対比較を集計する。絶対値より「どちらが優位か」を見る

仕様・制限・クォータ

  • Internet Analyzer は計測に徹するツールであり、実トラフィックの経路には介在しない(プロキシでも CDN でもない)。計測結果はあくまで構成判断の材料
  • 計測はページを開いた実利用者のブラウザで実行される。十分な母数を得るにはある程度のアクセス量と計測期間が必要で、トラフィックが少ないと統計的に有意な差は出にくい
  • 比較対象のエンドポイントは、計測スクリプトから到達でき、CORS など取得に必要な設定が整っている必要がある
  • 1 テストに登録できるエンドポイント数や、サブスクリプション/リソースあたりのテスト数などに上限がある(最新値は公式ドキュメントで確認)
  • 計測するのは主に**ネットワーク到達時間(レイテンシ)**であり、アプリのレンダリング全体の体感(LCP などのページ表示性能)を直接最適化するものではない

内部の仕組み

利用者が計測スクリプトを含むページを開くと、ブラウザは各エンドポイントへ小さなリソースを取得しに行き、応答までの時間を測ります。その結果が集約バックエンドへ送られ、地理やネットワーク(ASN)ごとに集計されて、どのエンドポイントが優位かが可視化されます。

  • 計測はバックグラウンドで非同期に行われ、利用者のページ表示を妨げない軽量設計が前提
  • 同一ユーザーから複数候補を計測することで、回線・地理の差を相対比較で打ち消し、純粋な構成差を見やすくする
  • 実ユーザーの地理分布・接続元 ASN がそのまま母集団になるため、合成監視では拾いにくい地域別の傾向が見える
  • 十分なサンプルが集まると、地域ごとにどちらが速いかの傾向が統計的に表れ、移行判断の根拠になる
合成監視と RUM の違いを使い分ける

特定リージョンの定点(合成監視)は再現性が高く回帰検知に向きますが、実ユーザーが世界中からどう感じているかは測れません。Internet Analyzer は実利用者のブラウザから計測する RUM 型で、移行や CDN 切り替えの意思決定に向きます。目的に応じて両者を併用するとよいです。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 移行前の効果検証: 現行エンドポイントと移行先候補を並べて計測し、切り替えで本当に速くなる地域・遅くなる地域を事前に把握する
  • CDN/配信構成の比較: 複数 CDN や複数リージョンを候補に登録し、実ユーザー分布での優位を比較してから採用を決める
  • 十分な母数を確保: トラフィックの多いページに計測を埋め込み、地域・期間を区切って統計的に有意な差が出るまでデータを蓄積する
  • 公平な比較条件をそろえる: 比較先エンドポイントの取得サイズや配置条件をそろえ、計測スクリプトから等しく到達できるようにして偏りを避ける
  • 判断後は外す: 計測は判断のための手段。移行が決まったらスクリプトを撤去し、不要なクライアント側処理を残さない

運用・監視

  • 計測結果は地理・ネットワーク別の比較ビューで確認し、地域ごとの優劣と差の大きさを読み取る
  • 十分なサンプル数が集まっているかを必ず確認する。母数が少ない地域の結果は誤差が大きく、結論を急がない
  • 計測スクリプトを実際に表示頻度の高いページへ配置し、対象ユーザー層を代表する母集団になるようにする
  • 構成変更後に再計測し、期待どおり改善したかを事後検証する。改善が確認できたら計測スクリプトの撤去を検討する

コスト

  • Internet Analyzer は比較的軽量な計測サービスで、コストの中心は計測の実行・集計にかかわる部分になる
  • 計測は実利用者のブラウザで動くため、閲覧側に通信が発生する点は意識する(軽量だが母数が大きいほど総量は増える)
  • 計測結果を Azure Monitor / Log Analytics などへ取り込んで分析する場合は、その取り込み・保存のコストが別途かかる
  • 変動する具体的な単価は公式の料金ページで確認すること

セキュリティ

  • 計測スクリプトは利用者のページで実行されるため、配信元と取得先を信頼できるものに限定し、不要な情報を送らない軽量な計測に留める
  • 比較先エンドポイントを公開する際は、内部 IP やプライベートな FQDN を露出しないよう登録内容に注意する
  • 計測のために設定する CORS などの許可は最小限にし、計測に必要な範囲を超えて緩めない
  • 計測結果には地理・ネットワークの集計情報が含まれる。保存・共有する場合はアクセス制御を適切に行う

関連サービス・比較

観点Azure Internet AnalyzerAzure Traffic Manager
主目的体感性能の計測・比較DNS でのグローバル振り分け
経路への介在しない(計測のみ)しない(DNS 応答のみ)
計測の出どころ実利用者のブラウザヘルスプローブ
使いどころ移行/CDN 切り替えの判断本番のルーティング制御
扱うデータ地理/ネットワーク別の比較エンドポイント正常性
実行タイミングページ閲覧時に計測常時のルーティング
  • いずれもトラフィックの経路には介在しない点が共通だが、役割は対照的。Internet Analyzer は「どの構成が速いかを測って判断する」ためのツール、Traffic Manager は判断後に「実際にどこへ振り分けるかを制御する」ためのツール
  • 典型的な流れは、Internet Analyzer で移行先候補の優位を実測し、その結論をもとに Traffic Manager や Front Door のルーティング設定に反映する、という組み合わせ
  • 継続的な可観測性が必要なら Azure Monitor / Log Analytics と連携し、計測結果を集約して傾向を追う

ハンズオン / CLI例

# リソースグループを作成
az group create --name demo-rg --location japaneast

# Internet Analyzer のプロファイルを作成
az network profile internet-analyzer create \
  --resource-group demo-rg \
  --name demo-analyzer \
  --location japaneast

# 比較対象のエンドポイント(現行構成)を追加
az network internet-analyzer endpoint create \
  --resource-group demo-rg \
  --profile-name demo-analyzer \
  --name current-cdn \
  --target www.contoso-current.com

# 比較対象のエンドポイント(移行先候補)を追加
az network internet-analyzer endpoint create \
  --resource-group demo-rg \
  --profile-name demo-analyzer \
  --name candidate-cdn \
  --target www.contoso-candidate.com

# プロファイルと登録済みエンドポイントを確認
az network profile internet-analyzer show \
  --resource-group demo-rg \
  --name demo-analyzer

Azure Service

Azure Internet Analyzerを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

ネットワーキング

比較で見る軸

クラウド: Azure / カテゴリ: ネットワーキング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

CDN 移行・リージョン移行・オンプレからクラウドへの移行など、切り替えの判断を実データで裏づける。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Azure
カテゴリ
ネットワーキング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
performance / operational

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「ネットワーキング / performance」に近いか確認する。
  • 強みである「実利用者のブラウザに計測用 JavaScript を埋め込み、複数エンドポイントへの体感性能を A/B で比較する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

ネットワーキングperformanceoperational