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Azure VPN Gateway
オンプレミスや個々の端末と Azure 仮想ネットワークを IPsec で暗号化接続する VPN ゲートウェイ。AWS の Site-to-Site VPN や Client VPN に相当。
- 1.拠点間 (S2S) と端末ごと (P2S) の暗号化トンネルをインターネット越しに張る。
- 2.アクティブ/アクティブや冗長トンネルで可用性を高められる。AWS S2S VPN 相当。
- 3.高帯域・安定が要るなら ExpressRoute、お手軽なら VPN Gateway と使い分ける。
解決する課題
専用線を引かずに、インターネット越しの暗号化トンネルでオンプレミスや個々の端末を Azure 仮想ネットワーク (VNet) に安全につなげます。
- オンプレミスのデータセンターと Azure を拠点間で常時接続したい
- 在宅勤務者や開発者の個々の端末から VNet 内のリソースへ安全に接続したい
- 専用線 (ExpressRoute) ほどのコストや手間をかけず、手早く暗号化接続を確立したい
- 接続を冗長化して単一トンネル障害でも通信を維持したい
主要概念と用語
- VPN Gateway: VNet 内の専用サブネット (GatewaySubnet) に配置される、IPsec/IKE トンネルを終端する仮想ネットワークゲートウェイ。種類は「VPN」と「ExpressRoute」があり、本サービスは前者
- サイト間 (Site-to-Site, S2S): オンプレミスの VPN デバイスと Azure の間に IPsec/IKE (IKEv1/IKEv2) トンネルを張る拠点間接続。AWS の Site-to-Site VPN に相当
- ポイント対サイト (Point-to-Site, P2S): 個々のクライアント端末から VNet へ接続する方式。OpenVPN、IKEv2、SSTP のプロトコルに対応し、証明書認証や Microsoft Entra ID 認証が使える。AWS の Client VPN に相当
- VNet 間 (VNet-to-VNet): 異なる VNet 同士を VPN ゲートウェイ経由で接続する方式
- ローカルネットワークゲートウェイ: オンプレミス側の VPN デバイスのパブリック IP とアドレス空間を表す Azure 側のオブジェクト
- 接続 (Connection): ゲートウェイとローカルネットワークゲートウェイを結びつけ、共有キー (PSK) などを設定する論理エンティティ
- ゲートウェイ SKU: 帯域・トンネル数・対応機能で分かれる性能区分。世代として AZ 対応 SKU があり、可用性ゾーンに配置できる
- ルートベース / ポリシーベース: トラフィックの振り分け方式。ルートベースは IKEv2 ベースで柔軟、ポリシーベースは IKEv1 で対象が限られる。新規は基本ルートベースを選ぶ
- アクティブ/アクティブ構成: ゲートウェイ側に 2 つのインスタンスとパブリック IP を持たせ、トンネルを冗長化する高可用性構成
- BGP: 動的ルーティング。経路を自動学習し、冗長経路の切り替えやトランジット接続に役立つ
仕様・制限・クォータ
- GatewaySubnet という名前の専用サブネットが必須。ここに他のリソースは配置しない。十分なアドレス空間 (推奨は余裕を持った範囲) を確保する
- 接続方式は S2S / P2S / VNet 間の 3 系統。S2S と VNet 間は IPsec/IKE、P2S は OpenVPN・IKEv2・SSTP に対応
- ルートベース VPN が推奨。ポリシーベースは IKEv1 ベースで単一接続・機能制限があり、レガシー機器向けの互換用途に限られる
- 同時 S2S トンネル数・P2S 接続クライアント数・集約スループットは SKU により上限が異なる。要件に合わせて SKU を選定し、不足時はより上位の SKU へ変更する
- アクティブ/アクティブやゾーン冗長 SKU で可用性を向上できる
- ゲートウェイのプロビジョニングには時間がかかる (数十分規模)。作成・SKU 変更時はメンテナンス時間を見込む
- IPsec/IKE の暗号パラメータ (暗号化アルゴリズム・PFS・SA ライフタイムなど) はカスタムポリシーで調整可能だが、オンプレ機器側と一致させる必要がある
内部の仕組み
VPN Gateway は、VNet の GatewaySubnet 上に冗長化された複数の仮想マシンインスタンスとしてマネージドに展開されます。利用者はこれらのインスタンスを直接操作せず、Azure がパッチ適用や障害時の入れ替えを担います。各インスタンスはパブリック IP を持ち、その上で IPsec/IKE トンネルを終端します。
- S2S では、オンプレミスの VPN デバイスとゲートウェイインスタンスの間で IKE のフェーズ 1・フェーズ 2 をネゴシエートし、確立した IPsec SA 上を暗号化トラフィックが流れる
- ルートベースではトンネルを仮想的なネットワークインターフェイスとして扱い、ルートテーブルや BGP に基づいてどのトラフィックをトンネルへ流すかを決める。これにより複数接続やトランジットが柔軟になる
- アクティブ/アクティブ構成では 2 インスタンスがそれぞれトンネルを張り、片側のメンテナンスや障害時ももう一方が通信を継続する
- P2S では、クライアントが VPN プロファイルを使ってゲートウェイへトンネルを張り、証明書または Entra ID で認証されたうえで割り当てアドレスプールから IP を受け取る
GatewaySubnet が狭いと、後からアクティブ/アクティブ化や ExpressRoute との共存ができなくなることがあります。最初から余裕を持ったアドレス範囲を確保しておくと、構成変更時の作り直しを避けられます。
設計パターン / ベストプラクティス
- 冗長化を前提に設計する: アクティブ/アクティブ構成と、オンプレ側も 2 台の VPN デバイスを用意して複数トンネルを張る。BGP で経路を自動切り替えする
- ルートベース VPN を既定で選ぶ: 将来の拡張 (複数接続・P2S 併用・BGP) に強い。ポリシーベースは機器互換のためだけに使う
- ハブ&スポーク: ハブ VNet にゲートウェイを集約し、スポークは VNet ピアリングで接続。ゲートウェイトランジットでスポークからオンプレへ到達させる
- 要件に応じて ExpressRoute と併用: 通常は ExpressRoute、障害時のフェイルオーバーに VPN Gateway をバックアップ経路として用意する設計が有効
- BGP を活用: 静的ルートの手運用を避け、冗長経路の自動収束やオンプレ複数拠点の経路集約を任せる
運用・監視
- Azure Monitor でトンネル帯域・接続状態・パケット数などのメトリクスを監視し、しきい値超過でアラートを設定する
- トンネルの接続状態を継続監視し、片側ダウン時に通知が飛ぶようにする。BGP のピア状態も確認対象
- 診断ログを Log Analytics や Storage へ送り、IKE のネゴシエーション失敗やトンネル切断の原因を解析する
- VPN トラブルシュート (Network Watcher の機能) で接続障害を診断できる。位相不一致 (暗号化パラメータの不整合) が代表的な原因
- SKU 変更やメンテナンスはダウンタイムを伴うため、アクティブ/アクティブと冗長トンネルで影響を最小化したうえで計画する
コスト
VPN Gateway はゲートウェイの稼働時間 (SKU 単位の時間課金) と送信データ転送量が主なコスト要素です。アイドルでも稼働している限り時間課金が発生します。
- ゲートウェイ時間課金: 選んだ SKU に応じて時間単位で課金。上位 SKU ほど高帯域・多トンネルだが単価も上がる
- 送信データ転送: Azure から外向きに出るトラフィックに対するデータ転送料金
- P2S の接続課金: P2S では接続クライアント数に応じた課金が加わる場合がある
過剰な上位 SKU は無駄になりがちです。必要なトンネル数・スループットを見積もり、適正な SKU を選びます。一方で、高帯域・安定が常時必要なら、従量の送信課金がかさむ VPN より ExpressRoute の方が総額で有利になる場合があります。検証用ゲートウェイは使い終えたら削除して時間課金を止めましょう。
セキュリティ
- 転送は IPsec で暗号化される。暗号化アルゴリズムや PFS などはカスタム IPsec/IKE ポリシーで強度を引き上げられる
- 共有キー (PSK) は十分に長く複雑なものを使い、定期的にローテーションする。可能なら BGP と証明書ベースの構成を検討する
- P2S の認証は証明書認証に加え、Microsoft Entra ID 認証を使うと条件付きアクセスや多要素認証と統合でき、端末・ユーザー単位の制御が強化される
- 最小権限のルーティング: トンネルへ流すアドレス範囲を必要最小限に絞り、不要な経路の到達性を作らない
- ゲートウェイのパブリック IP は攻撃対象になり得るため、ログ監視と異常検知を有効にする
ポリシーベース (IKEv1) は単一接続・機能制限が多く、アクティブ/アクティブや BGP、複数 S2S トンネルと相性が悪いです。レガシー機器の互換目的でなければ、新規構成ではルートベース (IKEv2) を選んでください。
Well-Architected の観点
- 信頼性 (Reliability): アクティブ/アクティブ構成、オンプレ側の冗長 VPN デバイス、複数トンネル、BGP による自動経路収束、ゾーン冗長 SKU で単一障害点をなくす。ExpressRoute のバックアップ経路としての VPN も信頼性向上策
- セキュリティ (Security): IPsec による暗号化、カスタム暗号ポリシーでの強度確保、P2S での Entra ID 認証と多要素認証、PSK のローテーション、最小経路の徹底
- コスト最適化: 要件に合った SKU 選定、検証ゲートウェイの停止・削除、常時高帯域なら ExpressRoute との比較検討
- オペレーショナルエクセレンス: Infrastructure as Code でゲートウェイと接続を再現可能にし、メトリクス・ログ・アラートで状態を可視化する
- パフォーマンス効率: スループット要件に応じた SKU 選定。インターネット経由ゆえ遅延・帯域が変動する点を踏まえ、安定が必要なら ExpressRoute を選ぶ
試験で問われるポイント
- 「オンプレミスと Azure を拠点間で暗号化接続したい」→ サイト間 (S2S) VPN
- 「個々の端末から VNet へ安全に接続したい」→ ポイント対サイト (P2S) VPN
- 「専用線で高帯域・低遅延・安定が欲しい」→ VPN Gateway ではなく ExpressRoute
- 「複数接続・BGP・アクティブ/アクティブを使いたい」→ ルートベース VPN (IKEv2)。ポリシーベースは互換目的に限る
- VPN Gateway には GatewaySubnet という名前の専用サブネットが必須
- 高可用性はアクティブ/アクティブ構成と、オンプレ側の冗長トンネルで実現する
- P2S は OpenVPN・IKEv2・SSTP に対応し、証明書認証または Entra ID 認証が使える
- AWS との対応: S2S は Site-to-Site VPN、P2S は Client VPN に相当する
関連サービス・比較
VNet とオンプレを結ぶ手段は VPN Gateway だけではありません。専用線の ExpressRoute や、AWS の対応サービスとの違いを押さえると選定が速くなります。
| 観点 | Azure VPN Gateway | AWS の相当サービス |
|---|---|---|
| 拠点間の暗号化接続 | サイト間 (S2S) VPN | Site-to-Site VPN |
| 端末ごとのリモート接続 | ポイント対サイト (P2S) VPN | Client VPN |
| 接続の終端先 | 仮想ネットワーク (VNet) の GatewaySubnet | VPC の仮想プライベートゲートウェイや Transit Gateway |
| 専用線 (非インターネット) | ExpressRoute (別サービス) | Direct Connect |
| 暗号方式 | IPsec / IKE (IKEv1・IKEv2) | IPsec / IKE |
| 動的ルーティング | BGP に対応 | BGP に対応 |
インターネット経由の VPN Gateway は手早く安価ですが、帯域や遅延が変動します。常時の高帯域・低遅延・安定が必要なら専用線の ExpressRoute を選び、VPN Gateway はそのバックアップ経路として併用するのが定番です。
ハンズオン / CLI例
# リソースグループを作成
az group create --name vpn-demo-rg --location japaneast
# VNet と GatewaySubnet を作成 (専用サブネット名は GatewaySubnet 固定)
az network vnet create \
--resource-group vpn-demo-rg \
--name demo-vnet \
--address-prefix 10.0.0.0/16 \
--subnet-name GatewaySubnet \
--subnet-prefix 10.0.255.0/27
# ゲートウェイ用のパブリック IP を作成
az network public-ip create \
--resource-group vpn-demo-rg \
--name vpngw-pip \
--sku Standard \
--allocation-method Static
# ルートベースの VPN ゲートウェイを作成 (作成には時間がかかる)
az network vnet-gateway create \
--resource-group vpn-demo-rg \
--name demo-vpngw \
--vnet demo-vnet \
--public-ip-address vpngw-pip \
--gateway-type Vpn \
--vpn-type RouteBased \
--sku VpnGw1 \
--no-wait
# オンプレミス側を表すローカルネットワークゲートウェイを作成
az network local-gateway create \
--resource-group vpn-demo-rg \
--name onprem-lng \
--gateway-ip-address 203.0.113.10 \
--local-address-prefixes 192.168.0.0/16
# サイト間 (S2S) 接続を作成 (共有キーはオンプレ機器と一致させる)
az network vpn-connection create \
--resource-group vpn-demo-rg \
--name s2s-connection \
--vnet-gateway1 demo-vpngw \
--local-gateway2 onprem-lng \
--shared-key "REPLACE_WITH_STRONG_PRESHARED_KEY"
Azure Service
Azure VPN Gatewayを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
ネットワーキング
比較で見る軸
クラウド: Azure / カテゴリ: ネットワーキング / 難易度: intermediate
導入後に効く点
アクティブ/アクティブや冗長トンネルで可用性を高められる。AWS S2S VPN 相当。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- Azure
- カテゴリ
- ネットワーキング
- 難易度
- intermediate
- 関連資格
- —
- 設計柱
- reliability / security
判断チェックリスト
- 自社の用途が「ネットワーキング / reliability」に近いか確認する。
- 強みである「拠点間 (S2S) と端末ごと (P2S) の暗号化トンネルをインターネット越しに張る。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。