Cloud Service
Azure DDoS Protection
仮想ネットワーク上のリソースをL3/L4のDDoS攻撃から保護するマネージドサービス。常時トラフィックを学習し、攻撃を自動検知・緩和する。AWS の Shield に相当。
- 1.VNet 上のリソースを L3/L4 の DDoS 攻撃から自動緩和。
- 2.常時の学習でしきい値を調整し、攻撃時だけ緩和を発動。
- 3.AWS の Shield Standard / Advanced に相当する位置づけ。
解決する課題
- 大量の通信でサービスを枯渇させる**ボリューメトリック攻撃(帯域あふれ)**を吸収したい
- SYN フラッドなどの**プロトコル攻撃(L3/L4)**で接続テーブルや状態を食い潰されるのを防ぎたい
- 攻撃の検知・緩和を人手の運用に頼らず自動化し、平常時の正常通信は通したい
- 公開エンドポイント(VM・ロードバランサ・アプリケーションゲートウェイ等)を個別に守るのではなく、ネットワーク単位でまとめて保護したい
主要概念と用語
- DDoS Protection(保護プラン): 仮想ネットワークに関連付けて使う保護リソース。VNet 内のパブリック IP を持つリソースが保護対象になる
- 基本保護(プラットフォーム既定): Azure のグローバルネットワークに追加費用なしで常時組み込まれている基盤レベルの緩和。テナント全体で共通のしきい値が適用される
- ネットワーク保護(有料プラン): VNet に紐づけて使う上位プラン。リソースごとに最適化された緩和ポリシー、攻撃メトリクス、攻撃後のレポート、緩和フローログ、コスト保護などが付く
- IP 保護(有料・単一 IP 単位): VNet 全体ではなく個々のパブリック IP 単位で有料保護を有効化する課金単位。小規模構成向け
- 緩和(Mitigation): 攻撃と判定したトラフィックをスクラビングして破棄し、正常な通信だけをバックエンドへ通す処理
- 適応型チューニング: 各リソースの平常時トラフィックを学習し、緩和を発動するしきい値を自動調整する仕組み
- L3/L4 と L7 の役割分担: 本サービスはネットワーク層・トランスポート層(L3/L4)が対象。アプリケーション層(L7)の攻撃は Web Application Firewall(WAF) と組み合わせて防ぐ
仕様・制限・クォータ
- 保護されるのはパブリック IP を持つ Azure リソース(VM、Load Balancer、Application Gateway、Front Door の一部経路など)。プライベート IP 単体は対象外
- 緩和は L3/L4 が中心で、HTTP リクエスト氾濫のような L7 攻撃は WAF 側の役割
- **PaaS の一部(マルチテナントのフロントエンド型サービス)**はプラットフォーム側で広域に保護され、VNet 保護プランの対象外となる場合がある
- 有料プランは1 つの保護プランを複数 VNet で共有でき、プラン配下で保護できるパブリック IP 数の上限が定義されている(超過分は追加課金の考え方)
- 攻撃メトリクス・診断ログ(緩和開始/終了、緩和フローログ、レポート)は Azure Monitor へ送って分析・アラートできる
- 基本保護は有効化操作が不要(既定で全テナントに適用)。有料保護は明示的にプランを作成して VNet または IP に関連付ける必要がある
DDoS Protection が緩和するのはネットワーク層・トランスポート層(ボリューメトリック / プロトコル攻撃)です。正規に見える HTTP リクエストを大量に送るアプリケーション層(L7)の攻撃は緩和対象外なので、Front Door / Application Gateway の WAF を併用してください。両者は競合ではなく補完関係です。
内部の仕組み
DDoS Protection は、保護対象リソースに流入するトラフィックを常時モニタリングしています。各リソースのトラフィックパターン(パケットレート、フロー数、プロトコル構成など)を学習し、そのリソース固有の正常範囲をベースラインとして持ちます。
- 観測値がベースラインを超え、攻撃と判定されると、Azure のグローバルネットワークに分散配置されたスクラビング(洗浄)基盤が緩和を発動する
- 緩和では不正なトラフィックを破棄し、正常な通信だけをバックエンドへ通す。緩和はネットワークのエッジ側で行われるため、攻撃トラフィックがバックエンドに到達する前に吸収されやすい
- 緩和の発動・停止、緩和したパケット量などはメトリクスとログとして記録され、攻撃後には緩和レポートが生成される
- 有料プランでは適応型チューニングにより、トラフィックの増減(例: キャンペーンによる正常な急増)に追従してしきい値が調整され、過検知(正常通信の巻き込み)を抑える
基本保護はテナント共通のしきい値で全リソースを守る一方、有料のネットワーク保護はリソース個別に最適化されたポリシー・攻撃メトリクス・レポート・コスト保護が付きます。公開サービスが事業に直結するなら有料プラン、検証や小規模なら基本保護+必要に応じて IP 保護、という切り分けが現実的です。
設計パターン / ベストプラクティス
- 公開エンドポイントを持つ本番 VNet に有料プランを関連付け、攻撃メトリクスとレポートで可視性を確保する
- DDoS Protection(L3/L4)と WAF(L7)を多層で併用し、ネットワーク層からアプリ層まで切れ目なく守る
- パブリック IP を最小化し集約する(不要な公開面を減らすことが最大の防御)
- エッジ配信サービス(Front Door 等)を前段に置き、グローバルネットワークで広域に攻撃を吸収する構成にする
- 緩和発動・攻撃トラフィックのメトリクスにアラートを設定し、攻撃の発生と規模を即座に把握できるようにする
- 負荷に追従できる自動スケール(VM スケールセット等)と組み合わせ、緩和をすり抜けた負荷増にも耐えられるようにする
運用・監視
- Azure Monitor のメトリクスで「攻撃下かどうか(Under DDoS attack)」「緩和中のパケット/バイト量」「破棄トラフィック」などを監視
- 診断設定で緩和開始/停止通知、緩和レポート、緩和フローログを Log Analytics / Storage / Event Hubs へ送る
- 緩和発動メトリクスにアラートを設定し、攻撃検知をオンコールへ通知
- 攻撃後は緩和レポートで攻撃ベクトル・ピーク値・継続時間を振り返り、しきい値や前段構成を見直す
- 平常時のトラフィックが急変する施策(大型キャンペーン等)の前は、適応型チューニングが追従するか・過検知が出ないかを事前に確認
コスト
基本保護は追加費用なしの常時提供で、上位機能は有料プランの契約で利用します。料金は変動するため、ここでは課金の考え方を定性的に示します。
| プラン | 課金の考え方 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 基本保護 | 追加費用なし(プラットフォーム既定) | 全テナント共通の基礎防御 |
| ネットワーク保護 | 保護プランの月額固定+保護IP数の上限超過分 | 公開サービスが多い本番VNet |
| IP 保護 | 保護するパブリックIPごとの従量課金 | 守る公開IPが少ない小規模構成 |
- 有料のネットワーク保護は月額固定が中心で、1 プランを複数 VNet で共有できるため、公開 IP が多い組織ほど割安になりやすい
- IP 保護は IP 単位の課金なので、守る公開エンドポイントが少ない場合に向く
- 有料プランには**コスト保護(緩和中のスケールアウト費用クレジット)**が含まれ、攻撃による想定外のスケール費用を緩和できる
セキュリティ
- DDoS(L3/L4)と WAF(L7)の多層防御で、ネットワーク層からアプリ層までの攻撃に対応
- 公開面の最小化(不要なパブリック IP を作らない、Private Endpoint 等で非公開化)が前提
- 緩和は正常通信を維持したまま不正トラフィックのみ破棄するため、可用性そのものの防御に直結する
- 診断ログ・緩和レポートで攻撃を可視化し、インシデント対応と事後分析の証跡にする
- ネットワーク制御(NSG・サービスタグ)や前段のエッジ配信と組み合わせ、到達面を物理的に絞る
DDoS Protection を有効化しただけで「すべての攻撃を防げる」と考えるのは危険です。本サービスは L3/L4 が対象で、正規に見える HTTP リクエストを浴びせる L7 攻撃には効きません。WAF の併用を怠ると、ネットワーク帯域は守れてもアプリケーションは落ちます。また、公開 IP を無秩序に増やして攻撃面を広げるのも避けてください。
Well-Architected の観点
- 信頼性: 攻撃下でも正常通信を維持し、可用性を守る。緩和はエッジで行われ、自動スケールと併用するとさらに堅牢になる
- セキュリティ: L3/L4 の緩和を WAF(L7)と組み合わせた多層防御。公開面の最小化と監視で攻撃面と検知性を両立
- 運用上の優秀性: 緩和の自動発動とメトリクス/レポートにより、人手の介入なしで攻撃を検知・対処できる
- コスト最適化: 基本保護は無償。有料プランは共有とコスト保護で、攻撃時の想定外スケール費用を抑える
試験で問われるポイント
- DDoS Protection が守るのは L3/L4(ボリューメトリック / プロトコル攻撃)。L7 は WAF の役割という役割分担
- 基本保護は全テナントに無償で常時適用され、有効化操作は不要。上位機能は有料プラン(ネットワーク保護 / IP 保護)
- ネットワーク保護は VNet 単位、IP 保護はパブリック IP 単位という課金・適用単位の違い
- 保護対象はパブリック IP を持つリソース。プライベート IP 単体は対象外
- 有料プランの付加価値は適応型チューニング・攻撃メトリクス/レポート・コスト保護
- 対応する AWS は Shield(無償の Standard と有料の Advanced)という相当関係
関連サービス・比較
DDoS Protection は L3/L4 を担い、L7 は WAF が担当します。AWS では Shield が同じ位置づけで、無償の Standard と有料の Advanced に分かれます。
| 観点 | Azure | AWS |
|---|---|---|
| DDoS 緩和(L3/L4) | DDoS Protection(基本 / 有料プラン) | Shield(Standard / Advanced) |
| 無償の基礎防御 | 基本保護(全テナント既定) | Shield Standard |
| 有料の上位防御 | ネットワーク保護 / IP 保護 | Shield Advanced |
| 適用単位 | VNet 単位 または パブリックIP単位 | アカウント単位+対象リソース |
| L7 攻撃の防御 | WAF(Front Door / App Gateway) | AWS WAF |
| コスト保護 | 緩和中のスケール費用クレジット | Shield Advanced のコスト保護 |
Azure の DDoS Protection(基本 / 有料) は、AWS の Shield(Standard / Advanced) とほぼ一対一で対応します。どちらも L3/L4 が守備範囲で、L7 は別途 WAF(Azure は Front Door / Application Gateway の WAF、AWS は AWS WAF)を併用する点も共通です。
ハンズオン / CLI例
# リソースグループを作成
az group create --name demo-rg --location japaneast
# DDoS Protection(ネットワーク保護)プランを作成
az network ddos-protection create \
--resource-group demo-rg \
--name demo-ddos-plan \
--location japaneast
# 仮想ネットワークを作成し、DDoS 保護プランを関連付け
az network vnet create \
--resource-group demo-rg \
--name demo-vnet \
--address-prefixes 10.0.0.0/16 \
--subnet-name app-subnet \
--subnet-prefixes 10.0.1.0/24 \
--ddos-protection true \
--ddos-protection-plan demo-ddos-plan
# 既存 VNet に後からプランを関連付ける場合
az network vnet update \
--resource-group demo-rg \
--name demo-vnet \
--ddos-protection true \
--ddos-protection-plan demo-ddos-plan
# 保護プランの状態を確認
az network ddos-protection show \
--resource-group demo-rg \
--name demo-ddos-plan \
--query "{name:name, vnets:virtualNetworks}" -o jsonc
Azure Service
Azure DDoS Protectionを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
セキュリティ・ID
比較で見る軸
クラウド: Azure / カテゴリ: セキュリティ・ID / 難易度: intermediate
導入後に効く点
常時の学習でしきい値を調整し、攻撃時だけ緩和を発動。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- Azure
- カテゴリ
- セキュリティ・ID
- 難易度
- intermediate
- 関連資格
- —
- 設計柱
- security / reliability
判断チェックリスト
- 自社の用途が「セキュリティ・ID / security」に近いか確認する。
- 強みである「VNet 上のリソースを L3/L4 の DDoS 攻撃から自動緩和。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。