バックアップとリカバリ
障害や誤操作に備えてデータを退避し、必要なときに復元する仕組みです。バックアップの種類、復元目標、復元テストの大切さを解説します。
- 1.バックアップは控えを取る作業、リカバリは控えから復元する作業。両方そろって初めて備えになる。
- 2.フルは全体、差分・増分は変化ぶんだけ。組み合わせて容量と復元の速さの釣り合いを取る。
- 3.どこまで戻すか(RPO)・どれだけ早く戻すか(RTO)を決め、復元テストで実際に戻せるか必ず確認する。
バックアップとリカバリとは
データは、ディスク故障・操作ミス・不正アクセス・災害など、さまざまな理由で失われます。バックアップ は、こうした事態に備えてデータの 控え(複製) を別の場所に取っておく作業です。そして リカバリ(復元) は、その控えを使ってデータを 元の状態に戻す 作業を指します。
大事なのは、この 2 つは セット だということです。控えを取っているだけで安心してはいけません。「いざというときに本当に戻せるか」まで含めて、初めて備えになります。
バックアップの種類
毎回すべてを丸ごとコピーするのは、容量も時間もかかります。そこで、取得方法を組み合わせて効率化します。
| 種類 | 何を取るか | 取得の重さ | 復元の手間 |
|---|---|---|---|
| フルバックアップ | 全データを丸ごと | 重い | これ 1 つで戻せる・簡単 |
| 差分バックアップ | 前回フル以降に変わったぶん | 中くらい | フル + 最新の差分 1 つ |
| 増分バックアップ | 前回バックアップ以降に変わったぶん | 軽い | フル + 途中の増分すべて |
ありがちな運用は「週に 1 回フル、毎日は差分または増分」という組み合わせです。差分は 直近のフルとの差 を毎回ためるので増分より復元が楽な一方、日が経つほどサイズが膨らみます。増分は 前回バックアップとの差 だけなので毎回軽い反面、復元には途中の増分をすべて順に適用する必要があります。
バックアップは「3 つの複製を、2 種類の媒体に、うち 1 つは別の場所に」という 3-2-1 ルールが定番です。同じサーバーの同じディスクにだけ控えを置くと、その機器が壊れたら控えごと失います。別ディスク・別拠点・クラウドなど、本体と運命を共にしない場所に分けて保管することが肝心です。
ポイントインタイムリカバリ(PITR)
「昨夜のバックアップ時点」までしか戻せないと、その後の更新は失われます。ポイントインタイムリカバリ(PITR) は、フルバックアップに 更新の記録(トランザクションログ/WAL) を組み合わせ、任意の時刻ちょうど までデータを巻き戻せる仕組みです。
たとえば「14 時 03 分に誤って大量削除した」場合、PITR があれば 14 時 02 分の状態 まで戻して被害を最小化できます。仕組みとしては、フルを復元したうえで、そこから目的の時刻までログを順に再適用していくイメージです。日次のバックアップだけでは取り戻せない「直前の更新」を救えるのが大きな利点です。
RPO と RTO
復元の方針を決めるとき、外せない 2 つの指標があります。
| 指標 | 読み | 意味 | ざっくり言うと |
|---|---|---|---|
| RPO | Recovery Point Objective | どの時点まで戻せれば許容できるか | 「失ってよいデータは最大どれだけ?」 |
| RTO | Recovery Time Objective | 復旧までにかけてよい時間 | 「どれだけ早く戻す必要がある?」 |
RPO を小さくしたい(失うデータを減らしたい)ほど、バックアップやログ取得の頻度を上げる必要があります。RTO を小さくしたい(早く復旧したい)ほど、復元しやすい構成や予備系が必要で、その分コストもかかります。どちらも「ゼロが理想」ですが、現実には費用とのバランスで決めます。重要な業務システムほど RPO・RTO を厳しく、影響の小さいものは緩く、とメリハリをつけるのが現実的です。
復元テストの大切さ
最後に、最も見落とされがちで最も重要な点です。バックアップは「取れていること」ではなく「戻せること」がゴール です。
- バックアップが途中で壊れていた
- 必要なファイルが含まれていなかった
- 手順書が古く、いざというとき誰も復元できなかった
こうした事故は、実際に復元を試すまで気づけません。だからこそ、定期的に 別の環境で復元してみる「復元テスト(リストア訓練)」 を行い、RTO 内に戻し切れるかまで確認しておくことが欠かせません。
一度も復元を試したことがないバックアップは、いざというとき本当に使えるか分かりません。「バックアップは取っているが、戻せたことはない」状態は、実質的に無防備に近いものです。取得が自動で回っていることだけで満足せず、定期的に復元して中身と手順を検証する——ここまでをセットにして初めて、バックアップは保険として機能します。
バックアップとリカバリは、地味ながらシステムの命綱です。種類を組み合わせて効率よく控えを取り、PITR で直前まで戻せるようにし、RPO・RTO で方針を定め、そして 復元テストで実際に戻せることを確かめる。この一連がそろって、初めて安心してデータを預けられます。
データベース Article
バックアップとリカバリを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
バックアップ
比較で見る軸
難易度: basic / カテゴリ: データベース / タグ数: 3
導入後に効く点
フルは全体、差分・増分は変化ぶんだけ。組み合わせて容量と復元の速さの釣り合いを取る。
先に潰すリスク
用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。
- 難易度
- basic
- カテゴリ
- データベース
- タグ数
- 3
判断チェックリスト
- 自社の用途が「バックアップ / リカバリ」に近いか確認する。
- 強みである「バックアップは控えを取る作業、リカバリは控えから復元する作業。両方そろって初めて備えになる。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。