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結合アルゴリズムの内部

同じ JOIN でもオプティマイザが選ぶアルゴリズムで速度は桁違いに変わります。3方式の計算量とメモリの原理を押さえれば、実行計画を見て遅さの理由が読めるようになります。

応用RDBクエリ最適化JOINオプティマイザ実行計画最終更新: 2026-06-21
TL;DR要点だけ先に
  • 1.結合方式は主に3つ。Nested Loop は内側に索引があれば小さな集合に強く、Hash Join は等値結合の大集合に強く、Sort-Merge Join はソート済み・範囲条件・大集合に向く。
  • 2.計算量の目安は Nested Loop が O(N×M)(索引付きで O(N×log M))、Hash Join が O(N+M)、Sort-Merge が両表のソート込みで O(N log N + M log M)。
  • 3.オプティマイザは結合条件(等値か否か)・推定行数・索引やソート順の有無・作業メモリ量を見積もり、総コスト最小の方式を選ぶ。

なぜ「結合方式」が問題になるのか

JOIN は論理的には「2つのテーブルを結合キーで突き合わせる」操作ですが、どう突き合わせるかの物理的な手段は1つではありません。RDB のオプティマイザは、同じ結合に対して Nested Loop Join / Hash Join / Sort-Merge Join の3方式を候補にし、推定コストが最小のものを選びます。どれを選ぶかで実行時間は数十〜数百倍変わるため、上級者は実行計画でこの選択を読めることが重要です。

以下では2つの表を、外側(駆動表)を N 行、内側を M 行として説明します。

Nested Loop Join

最も素朴な方式です。外側の表を1行ずつ走査し、その各行について内側の表を探して一致を探します。

for each row r in Outer(N rows):       -- 外側を1行ずつ
    for each row s in Inner(M rows):   -- 内側を総当たり
        if r.key == s.key:
            emit (r, s)

何も工夫しなければ内側を毎回フルスキャンするので、計算量は O(N × M)。N=1万・M=1万なら1億回の比較になり、大集合同士では破綻します。

ただし内側の結合キーにインデックスがあると話が変わります。内側のフルスキャン(M)が索引探索(log M 程度)に置き換わり、全体は O(N × log M) になります。これが Nested Loop の本領で、「外側 N が小さく、内側に索引がある」状況では最速になります。

条件内側の処理全体の計算量
内側に索引なし毎回フルスキャンO(N × M)
内側の結合キーに索引あり索引探索で直行O(N × log M)
内側を一度だけ読みメモリ保持キャッシュ参照O(N × M) だが定数小

メモリ使用は基本的にごく小さく、1行ずつ処理するため結果を逐次返せる(最初の数行を早く返せる)のも特徴です。LIMIT 付きや、外側がごく少数に絞れるクエリで選ばれやすい理由です。

Hash Join

等値結合(a.id = b.id)専用の方式です。2フェーズで動きます。

-- Build フェーズ: 小さい方(Build側)でハッシュテーブルを作る
for each row s in Build(M rows):
    insert s into HashTable[ hash(s.key) ]

-- Probe フェーズ: 大きい方(Probe側)を1行ずつ照合
for each row r in Probe(N rows):
    for each s in HashTable[ hash(r.key) ]:
        if r.key == s.key: emit (r, s)

各行はハッシュ計算で O(1) 相当の探索になるため、両表を1回ずつ読むだけで済み、計算量は O(N + M)。索引がなくても大集合同士の等値結合を高速にこなせるのが最大の強みです。

代償はメモリです。Build 側のハッシュテーブルを作業メモリに載せる必要があり、載りきらないと Grace Hash Join(両表を結合キーのハッシュでパーティション分割し、ディスクに書き出してから小分けに処理する方式)に切り替わります。これはディスク I/O を伴うため、メモリが足りているかが性能を大きく左右します。

試験・面接の頻出ポイント

Hash Join は等値条件でしか使えませんa.x > b.y のような範囲・不等号の結合条件では、ハッシュで「等しいバケット」を引けないため候補から外れ、Nested Loop か Sort-Merge が選ばれます。「Hash Join=等値専用」は必ず押さえておきましょう。

Sort-Merge Join

両表をそれぞれ結合キーでソートし、2つのソート済み列を併走させながらマージしていく方式です。

sort Outer by key;  sort Inner by key;   -- 事前にソート
i = j = 0
while i < N and j < M:
    if Outer[i].key == Inner[j].key: emit; 進める
    elif Outer[i].key <  Inner[j].key: i++   -- 小さい方を進める
    else: j++

マージ自体は両表を1回ずつ舐めるだけで O(N + M) ですが、支配的なのはソートのコストで、全体は O(N log N + M log M) になります。ただし入力が既にソート済みなら(結合キーに索引があってその順で読める、前段の ORDER BY で並んでいる等)ソートを省け、メリットが一気に増します。

範囲条件の結合や、結果をソート順で欲しい場合(直後に ORDER BY / GROUP BY / マージ系の集計が続く)に有利です。メモリ使用はソート用のワークスペースが要りますが、Hash Join のように「全体を一度に載せる」必要はなく、外部マージソートでディスクに溢れても比較的なだらかに劣化します。

オプティマイザはどう選ぶか

3方式の使い分けは、結合条件の種類・推定行数・索引やソート順の有無・作業メモリで決まります。

方式計算量メモリ向く条件
Nested LoopO(N×M) / 索引付き O(N×log M)極小外側が小・内側に索引あり・LIMIT で先頭だけ要る
Hash JoinO(N+M)大(Build をメモリ保持)等値結合・大集合・索引なし・順序不問
Sort-MergeO(N log N + M log M)中(ソート領域)範囲条件・入力がソート済み・結果に順序が要る

オプティマイザは各候補の総コストを見積もって比較します。原理は次の通りです。

  • 結合条件: 等値でなければ Hash Join は脱落。範囲・不等号は Nested Loop か Sort-Merge に絞られる。
  • 推定行数(カーディナリティ): 外側が極端に少なければ Nested Loop の N が小さく有利。両方とも大きければ起動コストはあるが N+M で済む Hash / Sort-Merge が逆転する。
  • 索引・ソート順: 内側の結合キー索引は Nested Loop を、入力のソート済み順は Sort-Merge を後押しする。
  • 作業メモリ(work_mem 等のパラメータ): Build 側が載るなら Hash Join が安く、溢れるなら Grace Hash のディスクコストが乗って不利になる。
統計が古いと選択を誤る

オプティマイザの判断は統計情報による行数の推定に依存します。統計が古く実際は100万行なのに「数十行」と見積もると、本来 Hash にすべき結合を Nested Loop にしてしまい、内側を何百万回も走査して致命的に遅くなります。ANALYZE で統計を最新に保つことが、正しい結合方式を引く前提条件です。詳しくはクエリ最適化を参照してください。

実行計画での見え方

PostgreSQL の EXPLAIN では Nested Loop / Hash Join(直下に Hash ノード)/ Merge Join(直下に Sort ノード)として現れます。想定と違う方式が選ばれていたら、まず推定行数(rows)と実測(actual rows)のズレを疑うのが定石です。大集合ではパーティショニングで対象を絞り、結合前の行数自体を減らすのも有効です。

まとめ

  • 同じ JOIN でも物理的な実行方式は3つ。計算量とメモリの特性が異なる
  • Nested Loop=外側が小・内側に索引ありで最速(O(N×log M))、メモリ極小で先頭を早く返せる。
  • Hash Join=等値結合の大集合に強い(O(N+M))が、Build 側を載せるメモリが要り、溢れるとディスクへ。
  • Sort-Merge=ソート込みで O(N log N + M log M)。範囲条件・ソート済み入力・順序が要る結果に有利。
  • オプティマイザは結合条件・推定行数・索引/ソート順・作業メモリから総コスト最小を選ぶ。統計を最新に保つことが正しい選択の土台。

データベース Article

結合アルゴリズムの内部を実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

RDB

比較で見る軸

難易度: advanced / カテゴリ: データベース / タグ数: 5

導入後に効く点

計算量の目安は Nested Loop が O(N×M)(索引付きで O(N×log M))、Hash Join が O(N+M)、Sort-Merge が両表のソート込みで O(N log N + M log M)。

先に潰すリスク

用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。

数字・仕様の読み方
難易度
advanced
カテゴリ
データベース
タグ数
5

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「RDB / クエリ最適化」に近いか確認する。
  • 強みである「結合方式は主に3つ。Nested Loop は内側に索引があれば小さな集合に強く、Hash Join は等値結合の大集合に強く、Sort-Merge Join はソート済み・範囲条件・大集合に向く。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

RDBクエリ最適化JOINオプティマイザ実行計画RDBクエリ最適化JOIN
参考: 公式情報