TL

Cloud Service

Migrate to Virtual Machines

オンプレや他クラウドの既存 VM を、エージェントレスのレプリケーションで Compute Engine へ移行。短い停止で本番を切り替えられる Google Cloud のマイグレーションサービス。AWS の MGN に相当。

中級信頼性運用上の優秀性コスト最適化
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.VMware やオンプレ、他クラウドの稼働中サーバーを Compute Engine へ移行する Google Cloud のマネージドサービス。
  • 2.稼働させたままディスクを継続レプリケーションし、本番切り替え(カットオーバー)時の停止時間を短く抑える。
  • 3.テスト用クローンで移行先の検証ができ、AWS の Application Migration Service(MGN)に相当する。

解決する課題

  • オンプレや他クラウドの稼働中サーバーを止めずに Compute Engine へ移したい
  • 移行のたびに OS を再構築・再インストールするのは手間が大きく、構成のズレも生まれる
  • 大量の VM をまとめて移行したいが、台数が増えると手作業では追従できない
  • 本番を切り替える前に、移行先の VM が問題なく動くか安全に検証したい
  • 切り替え時のダウンタイムを最小化し、業務影響を抑えたい

Migrate to Virtual Machines は、ソースの VM を稼働させたままディスクを継続的にレプリケーションし、短い停止で Compute Engine へ切り替えることでこれらを解決します。AWS で言えば Application Migration Service(MGN)に相当する位置づけです。

主要概念と用語

  • ソース(Source): 移行元の環境。VMware vSphere、AWS、Azure、または物理サーバーなどを指す
  • マイグレーション(Migration): 1 台のソース VM を Compute Engine へ移す処理の単位。状態(レプリケーション中、テストクローン中、カットオーバー済みなど)を持つ
  • レプリケーション: ソース VM のディスク内容を移行先へコピーし続ける処理。初回の一括コピー後は差分だけを同期する
  • エージェントレス移行: 多くの構成で、ソース VM にエージェントを常駐させずに移行できる方式。VMware ではコネクタ経由で連携する
  • テストクローン(Test-clone): 本番を切り替えずに、移行先の VM を試験的に起動して検証するための複製
  • カットオーバー(Cut-over): 本番をソースから移行先の Compute Engine VM へ切り替える操作。ここで実際の停止が発生する
  • コネクタ / マイグレーションコネクタ: ソース環境(vSphere など)と Google Cloud をつなぐ仮想アプライアンス
  • グループ(Group): 複数のマイグレーションをまとめて扱う単位。アプリ単位での一括カットオーバーに使う

仕様・制限・クォータ

  • 移行元として VMware vSphere、AWS、Azure、物理サーバーなどをサポートする(対応バージョンや OS は構成により異なる)
  • 移行先は Compute Engine。ターゲットのプロジェクト・リージョン・マシンタイプ・ネットワークなどを指定する
  • 移行できる OS や構成には条件があり、サポート対象の OS かどうかを事前に確認する必要がある
  • レプリケーション速度はソース側のディスク書き込み量とネットワーク帯域に依存する
  • 同時に移行できる VM 台数やストレージには上限・クォータがあり、大規模移行では事前確認と引き上げ申請が必要
  • 具体的な対応 OS 一覧や上限値は変動しうるため、設計時には公式ドキュメントで最新の対応表とクォータを確認すること

内部の仕組み

Migrate to Virtual Machines は、ソース VM を稼働させたままディスクをレプリケーションし、移行先で起動可能なディスクに変換する仕組みで動作します。

  • 初回は全ディスクを一括コピーし、その後は差分のみを継続同期する。これによりソースを止めずに移行先を最新状態へ近づけ続ける
  • レプリケーション中はテストクローンを作成でき、本番に影響を与えずに移行先 VM の動作を検証できる
  • カットオーバーでは、直近の差分を反映してから移行先 VM を正式に起動する。停止が発生するのはこのタイミングに限定される
  • VMware からの移行では、ソース環境に**コネクタ(仮想アプライアンス)**を配置し、Google Cloud と安全に連携してレプリケーションを行う
カットオーバーは戻しにくい一方向の操作

レプリケーションやテストクローンは本番に影響しませんが、カットオーバーは本番の切り替えです。切り替え後はソースへ戻すのが容易ではないため、テストクローンでの検証と切り戻し計画を済ませてから実施します。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 波(ウェーブ)に分けて移行: 全 VM を一度に移さず、依存関係の小さいグループから段階的にカットオーバーする
  • テストクローンで事前検証: 本番切り替え前に必ずテストクローンを起動し、アプリの起動・接続性・ライセンスなどを確認する
  • アプリ単位でグループ化: 相互に依存する VM はグループにまとめ、まとめてカットオーバーして整合性を保つ
  • 移行後に最適化: まず動く状態へ移し(リフト&シフト)、その後マシンタイプの適正化やマネージドサービスへの置き換えを検討する
  • ネットワークと権限を先に整える: 移行先の VPC、ファイアウォール、サービスアカウントを事前に用意し、切り替え時に詰まらないようにする

運用・監視

  • 移行コンソールで各マイグレーションの状態とレプリケーションの進捗を監視する
  • 初回の一括コピーには時間がかかるため、ネットワーク帯域と所要時間を見積もっておく
  • Cloud Logging / Cloud Monitoring で移行イベントや切り替え後の VM の挙動を確認する
  • カットオーバー後は、移行先 VM のアプリ動作・パフォーマンス・接続性を継続的に確認する
  • 移行完了後は不要になったレプリケーション資源やコネクタを片付け、コストの取りこぼしを防ぐ
まず動かす、それから最適化

移行段階で構成の刷新まで欲張ると失敗リスクが上がります。移行(動く状態への到達)と最適化(マシンタイプ適正化・モダナイズ)を分離し、段階的に進めるのが安全です。

コスト

  • Migrate to Virtual Machines の利用自体は、多くの構成で追加料金なしで提供される
  • 実際に課金されるのは、移行先で起動した Compute Engine の VM・ディスク・ネットワークなどの通常リソース
  • レプリケーション中に移行先側で保持するストレージや、テストクローンを起動した分のリソースには課金が発生する
  • 移行に伴うデータ転送(下り通信など)の費用が発生する場合があるため、帯域と転送量を見込んでおく
  • 移行後はマシンタイプの適正化や、継続利用割引・確約利用割引(CUD)の活用で定常コストを下げられる

セキュリティ

  • 移行先 VM に割り当てるサービスアカウントは最小権限にし、移行のついでに過剰権限を引き継がないようにする
  • コネクタやレプリケーション経路では、ソースと Google Cloud 間の通信を保護する(プライベート接続や暗号化を検討)
  • 移行先の VPC・ファイアウォールルールで通信を最小化し、テストクローンや本番の到達範囲を制御する
  • 移行・カットオーバーを実行できる操作は IAM で制御し、誰がどの VM を切り替えられるかを管理する
  • 移行先ディスクは Compute Engine と同様に既定で暗号化され、必要に応じて CMEK で自前鍵も利用できる
アンチパターン

ソースの広すぎる権限や古いセキュリティ設定をそのまま移行先へ持ち込むのは NG です。移行は構成を見直す好機なので、最小権限のサービスアカウントと最新のファイアウォール方針へ整理し直します。

関連サービス・比較

オンプレや他クラウドからのデータベースやコンテナを含めた移行は、関連サービスと役割が分かれます。VM そのものの移行を担う Migrate to Virtual Machines と、関連する移行サービスを整理します。

観点Migrate to Virtual MachinesDatabase Migration Service
移行対象サーバー(VM)丸ごとデータベース
移行先Compute Engine の VMCloud SQL / AlloyDB など
主な用途リフト&シフトでの VM 移行DB のマネージド化を伴う移行
停止の考え方カットオーバーで短時間停止継続レプリケーションで最小停止
AWS の相当Application Migration Service(MGN)Database Migration Service(DMS)

ハンズオン / CLI例

# 1. 移行元(ソース)の登録状況を確認する
gcloud migration vms sources list \
  --location=asia-northeast1

# 2. 特定ソース配下のマイグレーション一覧を確認する
gcloud migration vms migrating-vms list \
  --location=asia-northeast1 \
  --source=my-vsphere-source

# 3. テストクローンを作成して移行先 VM を検証する
gcloud migration vms migrating-vms clone-jobs create test-clone-01 \
  --location=asia-northeast1 \
  --source=my-vsphere-source \
  --migrating-vm=app-server-01

# 4. 検証後、本番をカットオーバーする
gcloud migration vms migrating-vms cutover-jobs create cutover-01 \
  --location=asia-northeast1 \
  --source=my-vsphere-source \
  --migrating-vm=app-server-01

Google Cloud Service

Migrate to Virtual Machinesを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

コンピューティング

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

稼働させたままディスクを継続レプリケーションし、本番切り替え(カットオーバー)時の停止時間を短く抑える。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
コンピューティング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
reliability / operational / cost

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「コンピューティング / reliability」に近いか確認する。
  • 強みである「VMware やオンプレ、他クラウドの稼働中サーバーを Compute Engine へ移行する Google Cloud のマネージドサービス。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

コンピューティングreliabilityoperationalcost