Cloud Service
Google Cloud VMware Engine
オンプレの VMware 環境をそのまま Google Cloud へ持ち込めるマネージド VMware 基盤。vSphere や vSAN を作り直さず短期間で移行・拡張できる。AWS の VMware Cloud on AWS に相当。
- 1.VMware(vSphere/vSAN/NSX)一式を Google が運用するベアメタル上に丸ごと載せるマネージドサービス。
- 2.既存の VM や運用ツールを変えずにそのまま移行でき、クラウドへのリホストを短期間で実現できる。
- 3.Google Cloud の各種サービスと低遅延で連携でき、AWS の VMware Cloud on AWS に相当する位置づけ。
解決する課題
- オンプレの VMware 資産(VM・テンプレート・運用ツール)をそのままクラウドへ移したい
- 仮想マシンを 再構築・リプラットフォームせずに短期間でリホスト移行したい
- データセンターの退役・更改で、ハードウェア調達や保守を手放したい
- 災害復旧(DR)やバースト容量を クラウド側に確保したい
- VMware の操作感(vCenter, vSphere Client)を変えずに運用を続けたい
VMware Engine は、vSphere・vSAN・NSX といった VMware Cloud Foundation のスタックを Google が運用するベアメタル上に展開し、利用者に専用環境として提供します。アプリの作り替えを伴わない「リフト&シフト」を最短経路で実現できるのが最大の価値です。
主要概念と用語
- プライベートクラウド(Private Cloud): VMware Engine が提供する隔離された VMware 環境の単位。専用の vCenter・NSX Manager を持つ
- クラスタ(Cluster): プライベートクラウド内のノードの束。ノードを追加・削除して容量を増減する
- ノード(Node): クラスタを構成するベアメタルのホスト。CPU・メモリ・ローカルフラッシュを備え、vSAN のストレージにも寄与する
- vSphere / vCenter: VM を作成・管理する VMware の中核。利用者は使い慣れた vCenter で操作する
- vSAN: ノードのローカルストレージを束ねて作るソフトウェア定義の分散ストレージ
- NSX: ソフトウェア定義ネットワーク。論理スイッチ・ルーター・分散ファイアウォールを提供する
- HCX: オンプレと VMware Engine 間の VM 移行・ネットワーク延伸を行う VMware の移行ツール
- VPC ピアリング / Private Service Access: プライベートクラウドを Google Cloud の VPC や各種サービスへ低遅延で接続する経路
仕様・制限・クォータ
- ノード単位での購入: 容量はノード数で増減する。クラスタには最小ノード数の要件があり、本番では冗長性のため複数ノードを推奨
- リージョン × ゾーンに配置される。可用性を高めるには対応構成でストレッチクラスタ等を検討する
- ストレージは vSAN が基本で、必要に応じてクラウド側のファイル/オブジェクトストレージを併用できる
- ノード数・プライベートクラウド数・ネットワーク関連にはクォータがあり、引き上げ申請が可能
- 利用できるリージョンやノードの世代・スペックは時期により異なるため、最新は公式ドキュメントで確認する
数値や対応リージョンは変動するため、正確な上限・SLA は公式ドキュメントを参照してください。
内部の仕組み
VMware Engine は、Google が運用するベアメタルのノード上に VMware Cloud Foundation(vSphere, vSAN, NSX)を構成し、利用者ごとに隔離されたプライベートクラウドとして払い出します。利用者は vCenter にログインし、オンプレと同じ操作で VM を管理します。基盤のハードウェア保守やファームウェア、ハイパーバイザのパッチ適用といった下回りは Google とパートナーが担います。
ストレージは各ノードのフラッシュを vSAN で束ねた分散ストレージが基本です。ノードを追加すると計算資源とストレージ容量が同時に増えます。ネットワークは NSX によるオーバーレイで提供され、論理セグメントや分散ファイアウォールをソフトウェア的に定義できます。
Google Cloud の他サービスとは VPC ピアリングや Private Service Access を介して接続され、同一リージョン内であれば低遅延で BigQuery や Cloud Storage、各種データベースと連携できます。オンプレとの間は Cloud VPN / Cloud Interconnect で接続し、移行時は HCX で VM をライブ/一括移行したり L2 ネットワークを延伸したりします。
VMware Engine の主眼は「既存 VM をそのまま動かす」ことです。クラウドネイティブ化(コンテナ化やマネージド DB への載せ替え)は移行後に段階的に進める前提とし、まずは止めずに移すリホストを優先すると失敗が少なくなります。
設計パターン / ベストプラクティス
- 段階移行: HCX でアプリ単位・依存関係単位に分けて移行し、切り戻し可能な状態を保つ
- リホスト → リファクタの順: まずそのまま移し、移行後に必要なものから Compute Engine / GKE / マネージドサービスへ載せ替える
- 可用性設計: 単一ノード構成は避け、本番は複数ノードで冗長化。要件次第でゾーンをまたぐ構成を検討する
- ネットワーク連携: Google Cloud のサービスを使う場合は VPC ピアリング経由で低遅延に寄せ、egress 経路を整理する
- DR 用途: オンプレの待機系を VMware Engine 側に置き、平常時はノードを絞ってコストを抑える
運用・監視
- 日常運用は使い慣れた vCenter / vSphere Client で行える。VM のメトリクスやアラートも従来ツールを継続利用できる
- 基盤の Cloud Monitoring / Cloud Logging と組み合わせ、ノードやネットワークの状態、課金に直結する容量を可視化する
- **ノード使用率(CPU・メモリ・vSAN 容量)**を監視し、逼迫前にクラスタへノードを追加する
- ハイパーバイザや基盤のメンテナンスは Google 側で実施されるため、メンテナンス通知を確認し業務影響を見積もる
- 移行作業中は HCX のレプリケーション状況と切り替えウィンドウを管理する
コスト
- 課金は基本的にノードの稼働時間に基づき、ノード数 × 時間で積み上がる。1ノードでも計算とストレージを内包するため、最小構成でも一定のコストが発生する
- 長期利用が見込めるなら**確約利用割引(CUD)**相当のコミットでオンデマンドより単価を下げられる場合がある
- Google Cloud の他サービス利用料、外部への通信(egress)、相互接続(Interconnect/VPN)の費用は別途かかる
- コスト最適化の要点は、ノード数の適正化(過剰なノードを持たない)と、DR など低稼働用途での最小構成維持
具体的な料金やコミット割引率は変動するため、見積もりは公式の料金ページと料金計算ツールで確認してください。
セキュリティ
- ネットワークは NSX の分散ファイアウォールでマイクロセグメンテーションを行い、東西方向の通信も最小化する
- 操作権限は Cloud IAM と vCenter のロールの二層で管理し、それぞれ最小権限にする
- データは保存時に暗号化され、要件に応じて鍵管理(Cloud KMS / CMEK 相当)を組み合わせる
- オンプレ・クラウド間は Cloud VPN / Interconnect の暗号化・専用経路で接続し、公開経路への露出を避ける
広すぎる IAM ロールや vCenter の管理者権限を安易に配らないでください。また、プライベートクラウドの管理面を不必要に外部公開しないこと。用途ごとに最小権限とし、管理アクセスは限定した経路からのみ許可します。
関連サービス・比較
純粋な IaaS である Compute Engine と比べると、VMware Engine は「既存 VMware をそのまま動かす」点に特化しています。
| 観点 | VMware Engine | Compute Engine |
|---|---|---|
| 位置づけ | マネージド VMware 基盤 | GCP の基本 IaaS |
| 移行のしやすさ | 既存 VM をそのまま移せる | VM の作り直し/再構築が前提 |
| 管理ツール | 使い慣れた vCenter | gcloud / コンソール |
| ストレージ | vSAN | Hyperdisk / 永続ディスク(PD) |
| 主な用途 | リホスト移行・DR | クラウドネイティブな新規構築 |
| AWS の対応 | VMware Cloud on AWS | EC2 |
ハンズオン / CLI例
# プライベートクラウドを作成(ノード数やネットワーク設定を指定)
gcloud vmware private-clouds create my-private-cloud \
--location=asia-northeast1-a \
--cluster=my-cluster \
--node-type-config=type=standard-72,count=3 \
--management-range=192.168.0.0/24 \
--vmware-engine-network=my-ve-network
# プライベートクラウドの一覧を確認
gcloud vmware private-clouds list \
--location=asia-northeast1-a
# クラスタにノードを追加して容量を増やす
gcloud vmware private-clouds clusters update my-cluster \
--private-cloud=my-private-cloud \
--location=asia-northeast1-a \
--node-type-config=type=standard-72,count=4
Google Cloud Service
Google Cloud VMware Engineを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
コンピューティング
比較で見る軸
クラウド: Google Cloud / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate
導入後に効く点
既存の VM や運用ツールを変えずにそのまま移行でき、クラウドへのリホストを短期間で実現できる。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- Google Cloud
- カテゴリ
- コンピューティング
- 難易度
- intermediate
- 関連資格
- —
- 設計柱
- reliability / operational / security
判断チェックリスト
- 自社の用途が「コンピューティング / reliability」に近いか確認する。
- 強みである「VMware(vSphere/vSAN/NSX)一式を Google が運用するベアメタル上に丸ごと載せるマネージドサービス。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。