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Carbon Footprint
Google Cloud 利用に伴う電力由来の炭素排出量を可視化し、サービス別・プロジェクト別に把握できる無料のレポートツール。脱炭素やサステナビリティ報告の根拠データを得られる。AWS の Customer Carbon Footprint Tool 相当。
- 1.クラウド利用の電力由来 CO2 排出量をサービス別・リージョン別・プロジェクト別に可視化する。
- 2.コンソールの月次レポートに加え、BigQuery へエクスポートして詳細分析やレポート化ができる。
- 3.排出量を減らすツールではなく測定ツール。低炭素リージョン選定など設計判断の根拠に使う。
解決する課題
企業のサステナビリティ報告や脱炭素の取り組みでは、クラウド利用に伴う温室効果ガス排出量を定量的に把握する必要があります。しかし自社では計測できない電力由来の排出量を、利用者が自前で推定するのは困難です。Carbon Footprint は Google Cloud の利用実態から排出量を算定し、見える化することでこの課題に応えます。
- クラウド利用に伴う 炭素排出量(CO2 換算) を定量的に把握したい
- どの サービス・リージョン・プロジェクト が排出に効いているかを切り分けたい
- ESG / サステナビリティ報告の 根拠データ を継続的に取得したい
- 低炭素なリージョンへの移行など、設計判断の効果 を排出量で評価したい
主要概念と用語
Carbon Footprint は、利用量データと地域ごとの電力排出係数から、Google Cloud 利用に紐づく排出量を算定して提示します。
- 炭素排出量(Carbon Emissions): Google Cloud の利用に伴って発生する温室効果ガスを、二酸化炭素換算(CO2e)で表した量
- スコープ(Scope 1 / 2 / 3): GHG プロトコルの区分。利用者から見て、Google Cloud 由来の排出は主に間接排出として扱われる。レポートはこの区分に沿って排出を整理する
- ロケーションベース / マーケットベース: 排出量の算定方式。前者はその地域の電力系統の平均的な排出係数に基づき、後者は購入した再生可能エネルギー(クリーンエネルギー調達)を反映する考え方
- 配賦(Allocation): 共有インフラの排出を、各利用者の使用量に応じて割り当てる処理
- 粒度(Granularity): 排出量を プロジェクト・サービス・リージョン・月 などの軸で分解して見られる単位
- CFE(Carbon-Free Energy)割合: あるリージョンの電力が、時間単位でどれだけ無炭素電源でまかなわれているかを示す指標。低炭素リージョンを選ぶ際の参考になる
- BigQuery エクスポート: 排出量データを BigQuery のデータセットへ定期出力し、SQL やダッシュボードで分析できるようにする連携
仕様・制限・クォータ
- レポートは 月次 で更新され、対象月の利用が確定してから算定されるため、リアルタイムではなく一定の反映遅延がある
- 排出量は計測値ではなく 算定(推定)値 であり、利用量と地域の排出係数・配賦ロジックに基づく
- データは プロジェクト・サービス・リージョン などの軸で分解して参照できる
- コンソールのダッシュボードに加え、BigQuery への定期エクスポート や CSV ダウンロードで取得できる
- 過去にさかのぼって参照できる期間や、サービスごとのカバー範囲には制約があり、すべての項目が同じ粒度で出るとは限らない
- 算定方法やカバー範囲は更新されうるため、最新の公式ドキュメントで対象範囲を確認する
内部の仕組み
Carbon Footprint は、各プロジェクトの Google Cloud 利用量データと、リージョンごとの電力排出係数・データセンターの電力効率(PUE 等)を組み合わせ、利用に紐づく排出量を算定します。共有されるインフラの排出は、各利用者の使用量に応じて 配賦 され、プロジェクト単位の数値として集計されます。
算定結果は GHG プロトコルのスコープ区分に整理され、コンソールのダッシュボードで月次・サービス別・リージョン別に可視化されます。さらに BigQuery へ定期エクスポート すると、月ごとの明細を SQL で集計したり、Looker Studio などでレポート化したりできます。
排出量は対象月の利用が確定してから算定されるため、当月分が即時に出るわけではなく、数値は後から確定・更新される点に注意します。
Carbon Footprint は排出量を「測る」ツールであり、それ自体が排出を「減らす」わけではありません。可視化した結果をもとに、低炭素なリージョンの選定や不要リソースの停止といった具体的な設計・運用の改善につなげて、はじめて削減効果が生まれます。
設計パターン / ベストプラクティス
- 排出量を BigQuery にエクスポート し、月次でダッシュボード化してサステナビリティ報告の定例データにする
- プロジェクトやラベルの設計を整理し、チーム・サービス単位で排出を配賦 できるようにしておく
- 新規ワークロードのリージョン選定時に、CFE 割合の高い低炭素リージョン を候補に含めて評価する
- アイドルリソースの停止やリソース適正化(Recommender 等)と組み合わせ、コスト削減と排出削減を同時に進める
- 排出量データを コストデータと突き合わせ、費用対排出の観点で最適化対象を選ぶ
運用・監視
- 数値が出ない / 古い → 対象月の 算定が確定しているか、レポートの反映遅延の範囲かを確認する
- 内訳を深掘りしたい → コンソールのダッシュボードでサービス別・リージョン別を確認し、BigQuery エクスポート で明細を集計する
- 報告を定例化したい → エクスポート先データセットをもとに Looker Studio などで月次ダッシュボードを構築する
- 排出が想定より多い → 高排出のサービス・リージョンを特定し、低炭素リージョンへの移行や不要リソース停止を検討する
コスト
Carbon Footprint の機能自体(排出量レポートの閲覧、ダッシュボード)は 追加料金なしで利用 できます。費用が発生するのは、排出量データを BigQuery にエクスポート した際の BigQuery 側のストレージ・クエリ料金や、Looker Studio など分析基盤側の利用分です。
| 項目 | 課金の考え方 | コストを抑えるコツ |
|---|---|---|
| 排出量レポート閲覧 | 機能自体は無料 | まずは標準ダッシュボードで把握する |
| BigQuery エクスポート | BigQuery のストレージとクエリに課金 | 必要な月・列だけをクエリし保持を最適化 |
| ダッシュボード化 | 可視化ツール側の利用分 | 月次バッチ集計で参照コストを抑える |
セキュリティ
- 排出量データは組織のサステナビリティ情報につながるため、閲覧は IAM ロール で必要な担当者に限定する
- 排出量レポートの参照には、請求先アカウントや組織レベルの 閲覧権限 が必要になるため、最小権限で付与する
- BigQuery にエクスポート する場合、出力先データセットへのアクセスも IAM で制御し、必要に応じて暗号化する
- 誰がデータにアクセスしたかは Cloud Audit Logs で追跡できるようにしておく
Carbon Footprint の数値は計測値ではなく、利用量と排出係数・配賦ロジックに基づく算定値です。対外的なサステナビリティ報告に使う場合は、算定方法やカバー範囲を理解したうえで、根拠を明示して扱うことが重要です。
関連サービス・比較
排出量の可視化結果は、コスト最適化ツールである Active Assist / Recommender と組み合わせると、無駄なリソースの削減を通じてコストと排出の両方を下げられます。ここでは他クラウドの相当ツールと比較します。
| 観点 | Carbon Footprint(GCP) | 他クラウドの相当ツール |
|---|---|---|
| 位置づけ | クラウド利用の排出量を可視化 | AWS Customer Carbon Footprint Tool |
| 排出の分解軸 | プロジェクト・サービス・リージョン・月 | サービス・リージョン・期間 |
| データ取得 | ダッシュボードと BigQuery エクスポート | ダッシュボードとデータエクスポート |
| 算定の性質 | 利用量と排出係数による算定値 | 同様に算定値 |
| Azure の例 | CFE 割合などで低炭素地域を評価 | Emissions Impact Dashboard |
| 削減との関係 | 測定が中心。削減は設計運用で行う | 同様に測定が中心 |
ハンズオン / CLI例
Carbon Footprint は主にコンソールのダッシュボードと BigQuery エクスポートで扱います。エクスポートしたデータセットに対しては、通常の BigQuery と同じく bq コマンドで集計できます。
# エクスポート先データセットのテーブル一覧を確認
bq ls --project_id=PROJECT_ID carbon_footprint_dataset
# 直近月の排出量をサービス別に集計(列名はエクスポート定義に合わせる)
bq query --use_legacy_sql=false \
'SELECT
service.description AS service,
SUM(carbon_footprint_total_kgCO2e.location_based.scope2) AS scope2_kgco2e
FROM `PROJECT_ID.carbon_footprint_dataset.carbon_footprint`
GROUP BY service
ORDER BY scope2_kgco2e DESC'
# 集計結果を CSV に書き出してレポート化の入力にする
bq query --use_legacy_sql=false --format=csv \
'SELECT usage_month, project.id AS project, SUM(carbon_footprint_total_kgCO2e.location_based.scope2) AS scope2
FROM `PROJECT_ID.carbon_footprint_dataset.carbon_footprint`
GROUP BY usage_month, project
ORDER BY usage_month' > emissions_by_project.csv
Google Cloud Service
Carbon Footprintを実務で読む
TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。
解決すること
管理・ガバナンス
比較で見る軸
クラウド: Google Cloud / カテゴリ: 管理・ガバナンス / 難易度: basic
導入後に効く点
コンソールの月次レポートに加え、BigQuery へエクスポートして詳細分析やレポート化ができる。
先に潰すリスク
サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。
- クラウド
- Google Cloud
- カテゴリ
- 管理・ガバナンス
- 難易度
- basic
- 関連資格
- —
- 設計柱
- operational / cost
判断チェックリスト
- 自社の用途が「管理・ガバナンス / operational」に近いか確認する。
- 強みである「クラウド利用の電力由来 CO2 排出量をサービス別・リージョン別・プロジェクト別に可視化する。」が本当に評価軸になるか確認する。
- 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
- 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
- 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
- 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。