TL

Cloud Service

Private Service Connect

公開インターネットを経由せず、VPC 内のプライベート IP からマネージドサービスや自社サービスへ閉域接続するための仕組み。AWS の PrivateLink に相当。

中級セキュリティ
最終更新: 2026-06-14公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.サービスへインターネットを介さず、VPC 内部 IP で閉域接続する。
  • 2.コンシューマ側のエンドポイントとプロデューサ側のサービスアタッチメントで構成する。
  • 3.Google API への閉域到達やパートナー/自社サービス公開に使う、AWS PrivateLink 相当。

解決する課題

マネージドサービスや他組織のサービスへ、インターネットや外部 IP を経由せずに到達したい、というのが核心です。

  • Google API(Cloud Storage、BigQuery など)へ、外部 IP を持たないインスタンスから閉域で到達したい
  • 別 VPC・別組織が公開するサービスへ、IP レンジの重複を気にせず接続したい
  • 自社サービスを SaaS のように他テナントへ公開しつつ、相互の VPC を直接ピアリングせずに済ませたい
  • トラフィックを Google のバックボーン内に留め、攻撃面と外部依存を減らしたい

VPC ピアリングのように両者のネットワークを丸ごと結合するのではなく、特定のサービス単位で接続点だけを露出させるのが特徴です。

主要概念と用語

  • コンシューマ: サービスを利用する側。自分の VPC 内に接続用の入口(エンドポイント)を作る
  • プロデューサ: サービスを提供する側。ロードバランサの背後にサービスを置き、公開のための受け口を用意する
  • エンドポイント(コンシューマ側): コンシューマ VPC 内に確保したプライベート IP。ここ宛ての通信がプロデューサのサービスへ転送される。内部的には転送ルールとして実装される
  • サービスアタッチメント(プロデューサ側): プロデューサが内部ロードバランサに紐づけて公開する受け口。どのコンシューマからの接続を許可するかを制御する
  • PSC バックエンド: エンドポイントの代わりにロードバランサのバックエンドとして PSC を組み込む形態。コンシューマ側で独自のロードバランサ機能を被せたい場合に使う
  • アクセス先の種類: 大きく「Google API への PSC」「公開済みサービスへの PSC(プロデューサ・コンシューマ間)」の 2 系統がある
  • 承認モデル: サービスアタッチメント側で、接続を自動承認するプロジェクトの許可リストか、手動承認かを選べる

仕様・制限・クォータ

  • リージョン単位のリソース。エンドポイントとサービスアタッチメントは原則として同一リージョンで接続する
  • コンシューマとプロデューサで IP レンジが重複していても接続できる(NAT 的に変換されるため)。これがピアリングに対する大きな利点
  • プロデューサ側のサービスは内部ロードバランサの背後に置く必要がある。サービスアタッチメントはその内部ロードバランサに紐づく
  • 接続はサービス単位で、両 VPC のルートや内部 IP 空間全体が相互に見えるわけではない
  • エンドポイント数・サービスアタッチメント数・接続数などにクォータがある。規模が大きい構成では上限を事前に確認し、必要なら引き上げ申請する
  • Google API 向け PSC では、専用の IP を確保し、対象 API バンドル(全 API か、VPC Service Controls 対応のバンドルか)を選んで構成する

内部の仕組み

PSC は、コンシューマ VPC 内のプライベート IP 宛ての通信を、Google のネットワーク内部でプロデューサ側のサービスへ橋渡しします。要点は「接続点だけを公開し、ネットワーク全体は結合しない」ことです。

  • コンシューマはエンドポイント用にプライベート IP を 1 つ確保し、その IP 宛ての通信が PSC 経由でプロデューサのサービスアタッチメントへ向かう
  • プロデューサ側ではサービスアタッチメントが内部ロードバランサを指し、その背後の実体(インスタンス群、サーバーレスなど)へ分散される
  • 通信経路は Google のバックボーン内で完結し、インターネットを経由しない
  • IP レンジが重複していても、PSC が送信元 IP を変換するため衝突しない。プロデューサ側から見える送信元は PSC が用意したレンジになる
  • 接続の可否はサービスアタッチメントの許可リスト/承認設定で制御され、許可されたコンシューマプロジェクトのみが接続できる
ピアリングとの根本的な違い

VPC ピアリングは両ネットワークの IP 空間を結合するため、レンジ重複は禁止で、相手の多くのリソースが到達可能になります。PSC はサービス 1 点だけを露出し、IP 変換を行うのでレンジ重複も許容します。「広く繋ぐ」のではなく「狭く絞って繋ぐ」のが PSC です。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 外部 IP を持たせたくないインスタンスから Google API へ到達する経路として、Google API 向け PSC を採用する
  • 自社サービスを複数テナントへ提供する場合、各コンシューマにサービスアタッチメントを公開し、相手 VPC とピアリングしない疎結合な SaaS 提供にする
  • 重複 IP を持つ複数組織・買収後の統合環境など、レンジ調整が困難なケースで PSC を選び、再設計コストを避ける
  • コンシューマ独自のロードバランシングやヘルスチェックを被せたい場合は、エンドポイントではなく PSC バックエンド形態を検討する
  • 承認は安易な全自動にせず、信頼できるプロジェクトのみを許可リスト化し、不要な接続を作らせない

運用・監視

  • Cloud Monitoring で PSC 接続の通信量・接続状態を監視し、想定外の接続増加や切断を検知する
  • VPC フローログでエンドポイント経由のトラフィックを可視化し、誰がどのサービスへ流しているかを把握する
  • プロデューサ側は接続要求の承認状況を定期的に棚卸しし、不要になったコンシューマ接続を削除する
  • 接続不能の切り分けでは、エンドポイントの IP・リージョン整合、サービスアタッチメントの許可リスト、内部ロードバランサの健全性を順に確認する

コスト

課金の中心は PSC を介した処理データ量と、付随するロードバランサなどのリソースです。

課金対象課金の考え方コスト最適化のヒント
PSC 処理データエンドポイント経由で処理した通信量の従量不要な大容量転送を別経路や同一リージョンに寄せる
プロデューサ側 LB内部ロードバランサのリソース費公開サービスを集約し LB を増やしすぎない
付随リソース予約 IP や監視など未使用エンドポイント・アタッチメントを整理する

具体的な単価は変動するため、料金は公式の料金ページで最新値を確認してください。

セキュリティ

  • トラフィックがインターネットを経由しないため、外部公開エンドポイントを持たずにサービス連携でき、攻撃面を縮小できる
  • サービスアタッチメントの許可リスト/手動承認で、接続できるコンシューマを厳密に制限する
  • Google API 向け PSC を VPC Service Controls と組み合わせ、サービス境界の外へのデータ持ち出しを防ぐ構成にできる
  • IAM でエンドポイント・サービスアタッチメントの作成・変更権限を最小化する
  • 外部 IP を持たないインスタンスからでも Google API に到達できるため、インスタンスに外部 IP を付ける必要がなくなる
承認の緩さに注意

サービスアタッチメントを安易に自動承認・広い許可範囲で公開すると、意図しないプロジェクトからの接続を許してしまいます。公開側は許可するプロジェクトを明示し、原則は手動承認または限定した自動承認にとどめるのが安全です。

Well-Architected の観点

  • セキュリティ: 閉域接続でインターネット露出を排し、許可リストと VPC Service Controls で接続範囲とデータ持ち出しを統制する。これが PSC の最大の価値
  • 信頼性: プロデューサ側を内部ロードバランサ+複数バックエンドで冗長化し、単一障害点を避ける
  • 運用性: 接続の承認・棚卸しを定期化し、不要な接続が残り続けないようにする

試験で問われるポイント

頻出
  • PSC はサービス単位の閉域接続であり、VPC 全体を結合するピアリングとは異なる
  • コンシューマ側はエンドポイント(プライベート IP)、プロデューサ側はサービスアタッチメント+内部ロードバランサで構成する
  • IP レンジが重複していても接続できるのが、ピアリングに対する代表的な利点
  • 外部 IP を持たないインスタンスから Google API へ閉域到達する用途で問われやすい。VPC Service Controls との併用も論点
  • AWS で同等の概念を問われたら AWS PrivateLink(VPC エンドポイント/エンドポイントサービス)が対応する

関連サービス・比較

観点Private Service Connect(GCP)AWS PrivateLink(AWS)
位置づけサービス単位の閉域接続サービス単位の閉域接続
コンシューマ側エンドポイント(プライベートIP)インターフェース型 VPC エンドポイント
プロデューサ側サービスアタッチメント+内部 LBエンドポイントサービス+NLB
IP レンジ重複許容(IP 変換あり)許容(IP 変換あり)
マネージドサービス到達Google API への PSCAWS サービス向け VPC エンドポイント
主目的インターネットを介さない閉域連携インターネットを介さない閉域連携

VPC 全体を相互到達させたい場合は VPC ネットワークピアリング、オンプレミスとの専用線接続は Cloud Interconnect、Google マネージドサービスへの内部接続全般はプライベート サービス アクセスも比較対象になります。PSC は「サービス 1 点だけを閉域公開・利用する」ニーズに最適です。

ハンズオン / CLI例

# コンシューマ: PSC エンドポイント用のプライベート IP を予約
gcloud compute addresses create psc-endpoint-ip \
  --region=asia-northeast1 \
  --subnet=consumer-subnet \
  --addresses=10.10.0.50

# コンシューマ: 公開済みサービス(サービスアタッチメント)へのエンドポイントを作成
gcloud compute forwarding-rules create psc-endpoint \
  --region=asia-northeast1 \
  --network=consumer-vpc \
  --address=psc-endpoint-ip \
  --target-service-attachment=projects/producer-proj/regions/asia-northeast1/serviceAttachments/my-service

# プロデューサ: 内部ロードバランサを公開するサービスアタッチメントを作成(手動承認)
gcloud compute service-attachments create my-service \
  --region=asia-northeast1 \
  --producer-forwarding-rule=internal-lb-fr \
  --connection-preference=ACCEPT_MANUAL \
  --nat-subnets=psc-nat-subnet \
  --consumer-accept-list=consumer-proj=10

# 接続状態を確認
gcloud compute forwarding-rules describe psc-endpoint \
  --region=asia-northeast1 --format="value(pscConnectionStatus)"

Google Cloud Service

Private Service Connectを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

ネットワーキング

比較で見る軸

クラウド: Google Cloud / カテゴリ: ネットワーキング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

コンシューマ側のエンドポイントとプロデューサ側のサービスアタッチメントで構成する。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
Google Cloud
カテゴリ
ネットワーキング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
security

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「ネットワーキング / security」に近いか確認する。
  • 強みである「サービスへインターネットを介さず、VPC 内部 IP で閉域接続する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

ネットワーキングsecurity