TL

Cloud Service

Compute Cloud@Customer

OCI のコンピュートやネットワーク基盤を自社データセンター内のラックとして稼働させ、データ所在地や低遅延の要件を満たしつつクラウド運用を継続。Oracle が遠隔管理する従量課金型で、AWS Outposts に相当。

中級運用上の優秀性セキュリティ信頼性パフォーマンス効率
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.OCI のコンピュート基盤を、Oracle 管理のラックとして自社データセンターに設置する。
  • 2.データ所在地・低遅延・規制の要件で、クラウドを手元に置きたい場合に選ぶ。
  • 3.AWS Outposts 相当。ハードウェアは Oracle が遠隔管理し、利用は従量課金。

解決する課題

クラウドの俊敏さは欲しいものの、データを自国・自社の外に出せない、あるいは現場設備との通信に低遅延が要る、という要件はクラウド移行の障壁になりがちです。Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート基盤そのものを自社データセンター内のラックとして動かし、この対立を解消します。

  • データ所在地(データレジデンシ)や規制で、データを自社施設の外に出せない
  • 工場・店舗・拠点の設備と低遅延で通信したい(現地でデータ処理を完結させたい)
  • 既存のオンプレ資産と同一ネットワーク内でクラウド的に動かしたい
  • ハードウェアの調達・保守・パッチからは解放され、クラウドの運用体験を手元で得たい
  • 接続が不安定な環境でも、ローカルでコンピュートを動かし続けたい

主要概念と用語

  • Compute Cloud@Customer ラック: 自社データセンターに設置される、OCI のコンピュート・ストレージ・ネットワーク機能を内蔵したハードウェア。Oracle が所有・遠隔管理し、顧客は上で動くサービスを使う
  • Dedicated Region との違い: Dedicated Region Cloud@Customer は、OCI のフルリージョン(多数のサービス群)を自社施設に丸ごと持ち込む大規模オプション。Compute Cloud@Customer はコンピュート中心の小型ラックで、設置面積・電力・前提条件が小さい
  • コントロールプレーン: ラック内に同梱され、OCI コンソール / API / CLI 互換の操作をローカルで提供する。VM やネットワークの作成・管理を、クラウドと同じ感覚で行える
  • テナンシ / コンパートメント / IAM: クラウドの OCI と同じ概念で論理分離・権限管理を行う
  • シェイプ / VM: ラックの容量の範囲内で、フレキシブルシェイプ(OCPU・メモリ指定)の VM を起動する
  • 遠隔管理(Oracle 運用): ハードウェアの監視・パッチ・ファームウェア更新は Oracle が遠隔で実施し、顧客はインフラ運用から解放される

仕様・制限・クォータ

  • ラックは有限の物理容量(OCPU・メモリ・ストレージ)を持ち、起動できる VM 総量はその範囲に収まる。クラウドのように事実上無制限ではない点が最大の違い
  • 提供されるのはコンピュート中心のサービス群で、パブリック OCI の全サービスがそのまま使えるわけではない。利用可能なサービスは提供仕様に従う
  • 設置にはデータセンター側の前提条件(電力・冷却・物理スペース・ネットワーク接続)を満たす必要がある
  • 容量を増やしたい場合は、原則としてラックの追加・拡張で対応する(クラウドのオンデマンド拡張とは性質が異なる)
  • Oracle が遠隔管理するため、ハードウェアやコントロールプレーンの保守ウィンドウが伴う
  • 具体的な提供シェイプ・容量・対応リージョン・前提値は版や地域で変わるため、契約・公式ドキュメントで確認する

内部の仕組み

Compute Cloud@Customer は、OCI のコンピュート基盤を1つのラックに凝縮し、顧客のデータセンターに設置するハイブリッド構成です。ラック内にはコンピュート・ストレージ・ネットワークに加え、OCI 互換のコントロールプレーンが同梱されており、コンソール・API・CLI をローカルで提供します。これにより、クラウドの OCI と同じテナンシ・コンパートメント・IAM・シェイプの概念で VM を作成・運用できます。

データと処理は顧客施設内に留まるため、データ所在地要件を満たしつつ、現地設備との低遅延通信が可能になります。一方で、ハードウェアの監視・パッチ・ファームウェア更新といった基盤運用は、Oracle が遠隔から担います。顧客はインフラ保守から解放され、クラウドと同じ運用体験に集中できます。

どこで動くかが本質

Compute Cloud@Customer の価値は「OCI と同じ操作体験を、データを外に出さずに自社施設内で得られる」点にあります。パブリック OCI と同じ API・概念で扱える一方、容量はラックの物理上限に縛られる、という両面を理解しておくと設計を誤りません。

設計パターン / ベストプラクティス

  • ハイブリッド前提で設計する。機微データや低遅延処理はラックで、バースト需要やバックアップ・分析はパブリック OCI 側で受ける役割分担を考える
  • ラックは有限容量なので、シェイプとワークロードの容量計画を前もって行い、ピークと余裕を見積もる
  • パブリック OCI とラックで同じ IAM・コンパートメント設計を踏襲し、運用とポリシーを一貫させる
  • VM・ブートボリュームのバックアップを計画し、災害対策としてパブリック OCI リージョンへの退避経路を用意する
  • アプリはステートを外部化しておき、容量追加や保守時の移設・再配置に強い構成にする
  • ネットワークは現地データセンターのセグメントと整合させ、必要な通信のみを許可する

運用・監視

  • VM・ネットワーク・ストレージの作成や状態確認は、ラック内のローカルコンソール / API / CLI から、パブリック OCI と同じ操作で行える
  • メトリクスやログは OCI の Monitoring / Logging に相当する仕組みで取得し、容量使用率(残り OCPU・メモリ・ストレージ)を継続的に監視する
  • ハードウェアとコントロールプレーンの保守・パッチは Oracle が遠隔で実施するため、顧客はワークロード側の運用に集中できる
  • 容量が逼迫してきたら、VM の整理・配置見直し、またはラックの拡張・追加を検討する
  • 施設側のネットワーク接続が切れても、ラック上の VM はローカルで動作を継続できる前提で運用設計する

コスト

Compute Cloud@Customer は、自前でハードウェアを購入・保守する CAPEX モデルではなく、**OCI と同じ従量課金(OPEX 寄り)**でラックの利用に対して支払う形です。ハードウェアの所有・保守は Oracle 側にあり、調達・減価償却・故障対応の負担を抱えずに済みます。

コスト要素内容ポイント
ラック利用設置されたラックの利用に対する課金ハードウェア所有・保守は Oracle 側
稼働ワークロード起動した VM・ストレージなどの利用容量はラックの物理上限の範囲内
運用負荷監視・パッチ・故障対応Oracle の遠隔管理で自社負担を軽減
拠点展開拠点ごとにラックを設置現地処理で広域回線コストを抑制
容量はラック上限まで

パブリック OCI と違い、ラックの OCPU・メモリ・ストレージには物理的な上限があります。需要が上限を超えると、その場でオンデマンドに増やすことはできず、ラックの拡張・追加が必要です。容量計画を前提に設計してください。

セキュリティ

  • データと処理が自社施設内に留まるため、データ所在地・主権の要件を満たしやすい
  • 認証・認可はパブリック OCI と同じ IAM ポリシー / コンパートメントで制御し、最小権限を徹底する
  • VM から OCI サービスへアクセスする際は鍵のハードコードを避け、インスタンスプリンシパル相当の仕組みを使う
  • ネットワークはプライベートサブネットNSG / セキュリティリスト相当で境界を制御し、現地セグメントとの通信を必要最小限にする
  • ハードウェアとファームウェアのパッチは Oracle が遠隔で適用するため、基盤の脆弱性対応が運用に組み込まれる
  • 物理セキュリティ(設置施設の入退室管理など)は顧客側の責任分界に含まれる点を、責任共有モデルとして押さえる
責任分界を取り違えない

ハードウェアの保守・パッチは Oracle が担いますが、設置施設の物理セキュリティ、VM 上の OS・アプリのパッチ、IAM 設計、ネットワーク境界は顧客の責任です。責任共有モデルを誤解すると、守れているつもりの穴が残ります。

関連サービス・比較

最も近い関連サービスは Dedicated Region Cloud@Customer です。どちらも OCI を自社施設に持ち込むハイブリッド構成ですが、持ち込む範囲と規模が異なります。Compute Cloud@Customer はコンピュート中心の小型ラック、Dedicated Region はフルリージョン相当の大規模オプションです。AWS では Outposts が対応します。

観点Compute Cloud@CustomerDedicated Region Cloud@CustomerAWS 対応
持ち込む範囲コンピュート中心の機能OCI フルリージョン相当Outposts / 専用領域
規模・設置条件小型ラック、前提が小さい大規模、データセンター級ラック〜大規模
運用Oracle が遠隔管理Oracle が遠隔管理AWS が管理
操作体験OCI 互換のローカル APIOCI 互換のローカル APIAWS API 互換
主な用途データ所在地・低遅延の拠点規制下での包括的クラウドハイブリッド・現地処理
容量ラックの物理上限までリージョン規模で拡張設置容量まで

ハンズオン / CLI例

操作は OCI CLI 互換です。ラック内のコントロールプレーンに対し、パブリック OCI と同じコマンド体系で VM を作成・確認できます(エンドポイントや OCID は環境に合わせて置き換えてください)。

# ラック上の Compute インスタンス(VM)を作成
# シェイプとリソースはラックの容量の範囲内で指定する
oci compute instance launch \
  --compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
  --availability-domain "AD-1" \
  --shape "VM.Standard.E4.Flex" \
  --shape-config '{"ocpus": 2, "memoryInGBs": 16}' \
  --image-id "ocid1.image.oc1..xxxx" \
  --subnet-id "ocid1.subnet.oc1..xxxx" \
  --display-name "edge-app-1"

# 作成した VM の状態を一覧で確認
oci compute instance list \
  --compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
  --query "data[].{Name:\"display-name\", State:\"lifecycle-state\", Shape:shape}" \
  --output table

# ラックの容量計画の参考に、利用可能なシェイプを確認
oci compute shape list \
  --compartment-id "ocid1.compartment.oc1..xxxx" \
  --output table

OCI Service

Compute Cloud@Customerを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

コンピューティング

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: コンピューティング / 難易度: intermediate

導入後に効く点

データ所在地・低遅延・規制の要件で、クラウドを手元に置きたい場合に選ぶ。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
コンピューティング
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / security / reliability / performance

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「コンピューティング / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「OCI のコンピュート基盤を、Oracle 管理のラックとして自社データセンターに設置する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

コンピューティングoperationalsecurityreliabilityperformance