TL

Cloud Service

Exadata Database Service on Cloud@Customer

データを自社データセンターに置いたまま、Exadata の高性能 Oracle DB をクラウド運用で使える基盤。所在規制や低遅延要件を満たしつつ運用を Oracle に任せられ、AWS の RDS on Outposts に近い位置づけ。

中級パフォーマンス効率信頼性セキュリティ運用上の優秀性
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.Exadata 基盤を自社拠点へ設置しクラウド方式で運用する。
  • 2.データ所在規制や低遅延要件を満たしつつ高性能 Oracle DB を使える。
  • 3.AWS の RDS on Outposts に近いが Exadata 専用基盤が特徴。

解決する課題

  • データの所在を規制・社内ポリシーで 自社データセンター内に留めねばならない が、クラウドの運用性も欲しい
  • オンプレ業務システムと DB の間で 極めて低い遅延 が必要で、リモートのクラウドリージョンでは届かない
  • 大規模 Oracle DB を 最高水準の性能で動かしたいが、ハードウェアの調達・構築・パッチ運用は抱えたくない
  • オンプレミスの Exadata 資産やスキルを活かしつつ、調達からスケールまでをクラウドのモデルへ寄せたい
  • 自社拠点と Oracle 管理の責任分界を明確にし、インフラ運用を Oracle に肩代わりしてもらいたい

主要概念と用語

  • Exadata Database Service on Cloud@Customer: Exadata 専用ハードウェアを 顧客のデータセンターに設置し、Oracle がリモート管理するクラウドサービス。データは自社拠点に留まる
  • Exadata Cloud@Customer インフラ: 顧客拠点に置かれる物理基盤。データベースサーバー(計算ノード)と Exadata ストレージサーバー(ストレージセル)、高速ネットワークから成る
  • VM クラスタ: インフラ上に作る仮想マシン群。複数ノードで RAC を構成し、その上で Oracle DB を稼働させる
  • 責任分界: ハードウェアと基盤運用は Oracle が担い、DB やデータは顧客が管理する。データベースサーバーの VM では顧客が root 権限を持ち DB を運用できる
  • コントロールプレーン接続: Oracle のクラウド管理機能と拠点の基盤をつなぐ管理経路。プロビジョニングやパッチ配信に使う
  • スマートスキャン: 検索条件の絞り込みや集計の一部を ストレージセル側でオフロードし、計算ノードへ送るデータ量を減らす Exadata 中核機能
  • Oracle RAC(Real Application Clusters): 複数ノードで 1 つの DB を共有運用するクラスタ技術。ノード障害でも継続できる
  • ASM(Automatic Storage Management): ストレージセル上のディスクを束ねて冗長化・分散する Oracle のストレージ管理層
  • Data Guard: プライマリの REDO をスタンバイへ転送して複製する仕組み。サイト間・拠点間のディザスタリカバリに使う
  • デプロイモデルの対比: 同じ Exadata Database Service でも、Oracle のリージョン上に置く形態が Dedicated Infrastructure、自社拠点に置く形態が本サービスにあたる

仕様・制限・クォータ

  • Exadata 専用基盤を顧客拠点に設置する形態で、計算ノードとストレージセルが 専用の高速ネットワーク(RDMA) で接続される。共有マネージド DB より格段に高い性能を狙える
  • 構成は ノード数・CPU 数・ストレージ容量を選んでスケールできる。需要に応じて CPU を後から増減する 弾性スケールにも対応する
  • 計算ノードは複数で RAC を組み、Data Guard によるサイト間・拠点間のディザスタリカバリにも対応する
  • 利用できる Oracle DB のエディション・バージョンや上限ノード数・最大ストレージ容量は シェイプ(世代・モデル) により異なる。具体的な数値は世代で変動するため、最新の公式ドキュメントで確認すること
  • 設置には 電源・冷却・ラック・ネットワークなどの物理前提条件と、Oracle 管理用のコントロールプレーン接続を満たす必要がある
位置づけの確認

本サービスは「データを自社拠点に置きたい」要件があるときの選択肢です。データ所在の制約がなく純粋に最高性能だけを求めるなら、Oracle リージョン上の Dedicated Infrastructure 版の方が調達も運用も身軽なことが多いので、まず拠点要件の有無を見極めてください。

内部の仕組み

本サービスの核心は、Exadata の データベース層とストレージ層を専用設計で密結合した基盤を、そのまま顧客のデータセンターへ持ち込む点にあります。一般的な構成では「ストレージは単にデータを返すだけ」で検索やフィルタは計算ノードが引き受けますが、Exadata は スマートスキャンにより検索条件の絞り込みや列の射影、一部の集計を ストレージセル側で先に実行し、計算ノードへは必要なデータだけを返します。結果としてネットワークを流れるデータ量が激減し、大規模スキャンが高速化します。

責任分界の面では、基盤の物理運用・ハードウェア交換・基盤パッチを Oracle がリモートで担い、VM クラスタ上の DB は顧客が運用します。可用性は計算ノードを RAC で束ねることで 1 ノード障害でも DB を止めず、ストレージは ASM が複数セルへ冗長化して保持するため、セル障害でもデータを失いません。データは拠点内のストレージセルに留まり続け、Oracle のクラウドへ流れ出るのは管理用のメタデータ中心です。

性能が出る理由

速さの本質は「データをストレージから計算ノードへ大量に運ばないこと」です。スマートスキャンで不要なデータを運ぶ前に捨てることが、大規模分析・大規模バッチでの圧倒的な差につながります。設置場所が自社拠点でも、この仕組みは Dedicated 版と変わりません。

設計パターン / ベストプラクティス

  • 拠点要件のある最重要系に集中投下: データ所在規制や低遅延が必須の基幹・勘定系に絞って採用し、要件の緩い系は別サービスへ振り分ける
  • RAC で高可用を前提に設計: 複数ノード構成とし、アプリ側も接続プールやフェイルオーバーに対応した接続にする
  • Data Guard で災害対策: 別拠点や Oracle リージョンへスタンバイを構え、サイト障害でも継続できるようにする
  • 弾性スケールでピークに追従: CPU を需要に合わせて増減し、月末バッチなどピークだけ増強する
  • 既存ライセンスの活用: 既に Oracle DB ライセンスを持つなら BYOL(ライセンス持ち込み) でコストを抑える
  • 物理前提条件を事前確認: 電源・冷却・ラック・ネットワーク・コントロールプレーン接続の要件を、設置前にデータセンター側と擦り合わせる

運用・監視

  • OCI Monitoring / メトリクスで CPU・I/O・ストレージ使用量・ノードの状態を監視する。拠点設置でもクラウド側の管理画面から運用できる
  • 自動バックアップを構成し、任意時点への復元(point-in-time recovery)を可能にしておく。バックアップ先は拠点内ストレージやオブジェクトストレージなどから要件に合わせて選ぶ
  • パッチ適用は 計画的なメンテナンスとして実施。基盤側のパッチは Oracle がリモートで配信し、RAC のローリング適用でノードを順次更新して無停止に近い形で当てられる
  • ノード障害時は RAC が残りノードで継続、サイト障害時は Data Guard でスタンバイへ切り替えて復旧する
  • コントロールプレーン接続が切れると管理操作に影響するため、管理経路の冗長性と監視を確保しておく

コスト

計算(CPU)とストレージ、インフラの稼働時間が課金の中心です。専用基盤を顧客拠点に置くため単価は高めで、データ所在要件や性能・可用性が本当に必要なワークロードに使ってこそ費用対効果が出ます。具体的な料金は変動するため最新の価格表で確認してください。

課金要素内容最適化のコツ
インフラ(基盤)拠点に置く Exadata 基盤の稼働時間に対する課金最重要ワークロードへ集約し基盤を遊ばせない
計算(CPU)割り当てた計算リソース量と稼働時間弾性スケールでピークのみ増やし普段は抑える
ストレージデータ容量に応じた従量不要データのアーカイブで容量を抑える
バックアップバックアップ保持・保管容量に応じて従量保持期間を要件に合わせて短縮する
ライセンスライセンス込み または BYOL既存ライセンスがあれば BYOL で割引を狙う

セキュリティ

  • データが 自社データセンター内に留まること自体が大きな統制点。所在規制やデータ主権の要件を満たしやすい
  • 保存データは デフォルトで暗号化。鍵は OCI Vault(KMS) で管理し、顧客管理キー(CMK)も利用できる
  • DB は プライベートサブネットへ配置し、セキュリティリスト / NSG(ネットワークセキュリティグループ) で接続元を最小化する
  • IAM ポリシーで操作権限を制御し、最小権限の原則を徹底する。データベースサーバーの VM では顧客が root を持つため、OS レベルの統制も顧客責任となる
  • 通信は TLS で暗号化し、資格情報はコードに直書きせず OCI Vault のシークレットに保管する
アンチパターン

データを拠点に置いても、DB を社内全開放にすれば意味がありません。プライベートサブネットと NSG で接続元を限定し、鍵と資格情報は OCI Vault で集中管理してください。VM の root 権限は顧客責任なので、OS パッチや権限管理も怠らないでください。

関連サービス・比較

最も近いのは、同じ Exadata Database Service の Dedicated Infrastructure(Oracle リージョン上に置く形態)です。性能特性や RAC・ASM・Data Guard といった中核は共通で、違いは「どこに基盤を置くか」と「責任分界・物理前提条件」にあります。

観点Cloud@CustomerDedicated Infrastructure
設置場所顧客のデータセンターOracle のクラウドリージョン
データ所在自社拠点に留まるクラウドリージョン内
主な動機所在規制・低遅延純粋な性能・可用性
基盤性能Exadata 専用基盤で同等Exadata 専用基盤で同等
可用性RAC と ASM と Data GuardRAC と ASM と Data Guard
物理前提電源・冷却・設置要件ありOracle 側が用意
管理経路コントロールプレーン接続が必要リージョン内で完結

ハンズオン / CLI例

# Cloud@Customer の Exadata インフラ(拠点設置済みの基盤)を一覧表示
oci db exadata-infrastructure list \
  --compartment-id ocid1.compartment.oc1..xxxx \
  --output table

# 基盤上に VM クラスタ(RAC を構成する計算ノード群)を作成
oci db vm-cluster create \
  --compartment-id ocid1.compartment.oc1..xxxx \
  --display-name prod-exacc-vmcluster \
  --exadata-infrastructure-id ocid1.exadatainfrastructure.oc1..xxxx \
  --vm-cluster-network-id ocid1.vmclusternetwork.oc1..xxxx \
  --cpu-core-count 4 \
  --gi-version 19.0.0.0 \
  --ssh-authorized-keys-file ./id_rsa.pub

# 作成した VM クラスタの状態を確認
oci db vm-cluster get \
  --vm-cluster-id ocid1.vmcluster.oc1..xxxx

OCI Service

Exadata Database Service on Cloud@Customerを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

データベース

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: データベース / 難易度: intermediate

導入後に効く点

データ所在規制や低遅延要件を満たしつつ高性能 Oracle DB を使える。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
データベース
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
performance / reliability / security / operational

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「データベース / performance」に近いか確認する。
  • 強みである「Exadata 基盤を自社拠点へ設置しクラウド方式で運用する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

データベースperformancereliabilitysecurityoperational