TL

Cloud Service

OCI Cloud Migrations

オンプレや他クラウドの VM を検出・評価し、レプリケーションで OCI Compute へ移行する作業を一元管理するマネージドサービス。AWS の Migration Hub と MGN を合わせた位置づけ。

基礎運用上の優秀性
最終更新: 2026-06-14公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.VM の検出・評価・移行を一連のプロジェクトとして一元管理できる。
  • 2.ブロックレベルのレプリケーションで停止時間を抑えて OCI Compute へ移行する。
  • 3.AWS の Migration Hub(一元管理)と Application Migration Service(MGN、移行実行)を合わせた相当サービス。

解決する課題

オンプレミスや他クラウドで稼働している多数の仮想マシン(VM)を OCI へ移すとき、対象の棚卸し・移行可否の評価・実際の移し替えを場当たり的に進めると、抜け漏れや停止時間の超過、見積もりのブレが生じます。OCI Cloud Migrations は、これら一連の作業を 1 つのプロジェクトとして一元管理することで解決します。

  • 既存環境にどんな VM が何台あるのか、CPU・メモリ・ディスク構成を自動で検出して棚卸ししたい
  • 移行先 OCI でどの Compute シェイプが妥当か、概算コストはいくらか、移行できるかを事前に評価したい
  • 本番を長時間止めずに、データをコピーしながら少ない停止時間で切り替えたい
  • 多数の VM 移行の進捗を、誰がどこまで進んだかダッシュボードで可視化したい

AWS で言えば、移行全体の進捗を集約する Migration Hub と、サーバをブロックレベルでレプリケーションして移行する Application Migration Service(MGN) を合わせた役割に相当します。OCI ではこれらが Cloud Migrations という単一サービスにまとまっている点が特徴です。

主要概念と用語

  • 検出(Discovery): 既存環境の VM を見つけ出し、CPU・メモリ・ディスク・OS などの構成情報(インベントリ)を収集する工程。VMware vCenter などの仮想化基盤や他クラウドを対象にできる
  • アセット(Asset): 検出によって取り込まれた個々の移行対象(VM やそのディスク)を表す論理単位。インベントリ上で管理される
  • 移行プロジェクト(Migration Project): 一連の移行作業をまとめる入れ物。どのアセットを、どのコンパートメント・どの設定で OCI に移すかをこの単位で管理する
  • 移行プラン(Migration Plan): プロジェクト内のアセットに対する移行戦略。ターゲットの Compute シェイプ、ネットワーク、ストレージのマッピングや概算コストを定義する
  • アセスメント(評価): 各アセットが OCI に移行可能かをチェックし、推奨シェイプや概算コストを提示する工程
  • レプリケーション(Replication): ソース VM のディスクを OCI 側へ継続的にコピーする処理。ブロックレベルで差分を同期し続け、切り替え時の停止時間を抑える
  • ハイドレーションエージェント / レプリケーションエージェント: ソース側やレプリケーション処理に用いるコンポーネント。ソースのディスクデータを OCI 側のターゲットへ転送する役割を担う
  • カットオーバー(移行の確定): レプリケーション済みのデータをもとに、OCI 上で起動可能な Compute インスタンスとして最終的に立ち上げる工程

仕様・制限・クォータ

  • 主な移行対象は VM 単位のサーバ移行(リホスト / lift-and-shift) で、移行先は OCI Compute インスタンスになる。アプリの作り替え(リファクタ)を行うサービスではない
  • ソース環境としては VMware(vCenter)系の仮想基盤や他クラウドの VM などを検出・移行対象にできる。対応するソースの種類やバージョンは更新されるため公式ドキュメントを確認する
  • レプリケーションはブロックレベルの継続同期で、初回フルコピー後は差分を取り込み、停止時間(カットオーバー時の最終同期)を小さくできる
  • 移行はリージョン・コンパートメント単位で管理される。同時に扱えるアセット数や進行中のレプリケーション数などにはサービス上の上限があり、大規模移行では波(ウェーブ)に分けて段階移行するのが定石
  • 検出・評価で得られるシェイプ推奨や概算コストは目安であり、実際の最終的なサイジングは性能要件に応じて見直す
  • 具体的な対応ソース・上限値・推奨スペックなどは変動するため、断定せず公式の最新値を参照する
移行の 6R での位置づけ

Cloud Migrations が主に担うのは、構成を大きく変えずにそのまま移す「Rehost(リホスト)」です。データベースのエンジン移行や、アプリのクラウドネイティブ化(リプラットフォーム / リファクタ)は別の手段・サービスと組み合わせて計画します。

内部の仕組み

Cloud Migrations は、大きく 検出 → 評価 → レプリケーション → カットオーバーの流れで動きます。

  • 検出フェーズでは、vCenter などのソースに接続して VM のインベントリを収集し、アセットとして取り込む。これにより移行対象の全体像(台数・スペック)が把握できる
  • 評価フェーズでは、各アセットに対して移行可否をチェックし、ターゲットの推奨 Compute シェイプと概算コストを算出する。移行プランとしてターゲット設定(ネットワーク・ストレージのマッピング)を整える
  • レプリケーションフェーズでは、ソース VM のディスクをブロックレベルで OCI 側へコピーする。初回はフルコピー、その後は差分を継続的に同期し続けるため、ソースを動かしたままデータを先行転送できる
  • カットオーバーでは、同期済みデータをもとに OCI 上で Compute インスタンスとして起動する。直前に最終差分を同期してから切り替えるため、停止時間を短くできる

レプリケーション中はソース側のディスクデータが OCI のターゲット(ボリューム)へ転送され、最終的にブート可能なインスタンスとして組み上げられます。進捗や状態はプロジェクト単位で集約され、各アセットの段階(検出済み・評価済み・レプリケーション中・移行完了)が一覧できます。

カットオーバー前に検証する

レプリケーションが完了しても、移行後インスタンスが正しく起動・通信できるとは限りません。ドライバ、ネットワーク設定、ブート構成などは環境差で問題が出やすいため、本番カットオーバー前にテスト起動して検証してください。

設計パターン / ベストプラクティス

  • ウェーブ(波)分割で段階移行: 全 VM を一度に移さず、依存関係の小さいシステムから小さな単位で移行し、手順とリスクを検証しながら拡大する
  • 依存関係を先に整理: 相互に通信するシステムは同じウェーブにまとめ、移行中に片方だけ OCI、もう片方はオンプレという分断状態が長く続かないようにする
  • 事前にテスト移行: 本番カットオーバー前にテスト用に起動して、起動・ネットワーク・アプリ動作を確認してから本番を切り替える
  • ネットワーク経路の確保: レプリケーションのデータ転送量は大きいため、十分な帯域を確保し、必要に応じて FastConnect などの専用接続で安定させる
  • 評価結果を鵜呑みにしない: 推奨シェイプは目安なので、ピーク性能要件に合わせて手直しし、過剰・過少サイジングを避ける
  • 移行後の最適化を前提に: まずリホストで OCI に載せ、その後でマネージドサービス(Autonomous Database や OKE など)への置き換えを段階的に検討する

運用・監視

  • 移行の進捗はプロジェクト/アセット単位の状態(検出済み・評価済み・レプリケーション中・完了)で追跡する。多数 VM の全体像をダッシュボードで把握する
  • レプリケーションの進捗と差分同期の遅延を監視する。回線の細さやソース負荷で同期が滞ると、カットオーバー時の停止時間が伸びる
  • 操作の記録(誰がいつ移行プロジェクトを変更・実行したか)は OCI Audit で追跡する
  • 主要な状態変化を Events で受けて Notifications に通知し、レプリケーション失敗やカットオーバー完了をチームに知らせる運用にできる
  • 移行後インスタンスは通常の OCI Compute として Monitoring / Logging で監視対象に組み込み、移行前の性能・可用性と比較する
  • 失敗時の切り分けは、(1) ソースへの検出接続、(2) ソースから OCI へのレプリケーション経路と認証、(3) ターゲット側のシェイプ・容量・権限、の順で確認する

コスト

Cloud Migrations の移行管理機能そのものよりも、移行先で稼働させる OCI リソースデータ転送・一時的な二重稼働がコストの中心になります。

コスト要素課金の考え方最適化のポイント
移行ツールの利用検出・評価・移行管理は移行を促す位置づけで、主課金は移行先リソース側ツール費を気にせず棚卸しと評価を徹底する
移行先の Compute / StorageOCI 上で起動した VM とボリュームの従量課金評価結果を見直し過剰サイジングを避ける
一時的な二重稼働移行期間中はソースと OCI の双方が動き重複コストが出るウェーブを区切りカットオーバーを早めて重複期間を短くする
データ転送大量ディスクのレプリケーション転送が発生帯域確保と専用接続で安定化し再転送を避ける

セキュリティ

  • IAM ポリシーとコンパートメントで、移行プロジェクトを操作できる主体と、移行先となるコンパートメント・リソース範囲を最小権限に絞る
  • ソース環境(vCenter など)へ接続するための資格情報は安全に管理し、機密値は Vault(Secrets) に保管して直書きを避ける
  • レプリケーションの転送経路を保護する。データ転送は暗号化された経路で行い、必要に応じて FastConnect や VPN で経路を閉域化する
  • 移行先の Compute / Block Volume はデフォルトで保存時暗号化され、Vault(KMS)の顧客管理キーも利用できる
  • 移行後インスタンスは、移行前の古い認証情報やローカルアカウントが残りやすいため、移行を機に資格情報をローテーションし、不要なものを削除する
アンチパターン

移行を急ぐあまり、移行プロジェクトの操作権限を「テナンシ全体を manage」のように広く付けたり、ソース接続の資格情報を平文で構成に埋め込むのは危険です。権限は対象コンパートメントに限定し、機密値は Vault から渡してください。移行後に古い認証情報を放置するのも避けます。

Well-Architected の観点

  • 運用上の優秀性(Operational Excellence): 検出・評価・移行をプロジェクトとして一元管理し、進捗を可視化して属人化を防ぐ。ウェーブ単位の手順化で再現性を高める
  • 信頼性(Reliability): ブロックレベルのレプリケーションとテスト起動により、停止時間を抑えつつ移行の確実性を高める。失敗時はやり直し可能な単位で進める
  • セキュリティ(Security): 最小権限の IAM、資格情報の Vault 管理、転送経路の保護、移行後の認証情報ローテーションで安全に移し替える
  • コスト最適化(Cost Optimization): 事前評価で適切なシェイプを選び、二重稼働期間を短縮して重複コストを抑える

試験で問われるポイント

頻出
  • OCI Cloud Migrations は VM の検出・評価・移行(リホスト)を一元管理するサービスで、移行先は OCI Compute である
  • AWS の相当は、移行全体を集約する Migration Hub と、サーバをレプリケーション移行する Application Migration Service(MGN) を合わせた位置づけ
  • 流れは 検出(Discovery)→ 評価(Assessment)→ レプリケーション → カットオーバー。レプリケーションはブロックレベルの継続同期で停止時間を抑える
  • 主対象は VMware(vCenter)系などの VM。アプリのリファクタやエンジン移行を行うサービスではない
  • 大規模移行はウェーブ(波)に分けて段階移行し、カットオーバー前にテスト起動で検証するのが定石
  • ツール自体より移行先リソースと一時的な二重稼働・データ転送が主なコスト要因

関連サービス・比較

OCI Cloud Migrations は、AWS では役割が 2 つのサービスに分かれている領域を 1 つにまとめています。全体の集約は Migration Hub、移行実行は MGN に相当します。

観点OCI Cloud MigrationsAWS 相当(Migration Hub と MGN)
位置づけ検出・評価・移行を一元管理する単一サービスMigration Hub が集約、MGN が移行実行と役割分担
主な移行方式リホスト(lift-and-shift)リホスト(lift-and-shift)
移行先OCI Compute インスタンスAmazon EC2 インスタンス
レプリケーションブロックレベルの継続同期ブロックレベルの継続同期(MGN)
進捗の可視化プロジェクト/アセット単位で集約Migration Hub で集約
評価・コスト見積アセスメントで推奨シェイプと概算を提示Migration Hub の評価機能で把握

OCI 内では、移行先の Compute / Block Volume、経路確保の FastConnect / VPN Connect、機密管理の Vault(Secrets)、進捗連携の Events / Notifications、監査の Audit と組み合わせて使います。移行後の最適化として Autonomous DatabaseOKE などのマネージドサービスへの置き換えも視野に入れます。

ハンズオン / CLI例

検出ソースや移行プロジェクトは oci cloud-migrations 配下のコマンドで操作できます。次は移行プロジェクトを作成し、内容を確認する例です(リソース名はサブコマンドのヘルプで確認しながら進めるとよいです)。

# 0) 利用可能なサブコマンドを確認(リソース名の把握に有用)
oci cloud-migrations --help

# 1) 移行プロジェクトを作成する
#    移行対象アセットや結果を入れる「入れ物」を用意する
oci cloud-migrations migration create \
  --compartment-id "$COMPARTMENT_OCID" \
  --display-name "onprem-vmware-wave1"

# 2) 作成した移行プロジェクトの一覧と状態を確認する
oci cloud-migrations migration list \
  --compartment-id "$COMPARTMENT_OCID" \
  --output table

# 3) 個別の移行プロジェクトの詳細を取得する
oci cloud-migrations migration get \
  --migration-id "$MIGRATION_OCID"

# 4) 検出ソースの登録やレプリケーションプランの作成は、
#    discovery-schedule / migration-plan などのサブコマンドで進める
#    (対象に応じて oci cloud-migrations <resource> --help で確認)

OCI Service

OCI Cloud Migrationsを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

移行・転送

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: 移行・転送 / 難易度: basic

導入後に効く点

ブロックレベルのレプリケーションで停止時間を抑えて OCI Compute へ移行する。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
移行・転送
難易度
basic
関連資格
設計柱
operational

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「移行・転送 / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「VM の検出・評価・移行を一連のプロジェクトとして一元管理できる。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

移行・転送operational