TL

Cloud Service

OCI Stack Monitoring

DBやミドルウェアなど多層スタックの健全性をエージェントで自動探索し一元監視。リソース種別ごとの推奨指標とトポロジで障害の根本原因を素早く切り分ける。AWS の CloudWatch Application Insights に近い位置づけ。

中級運用上の優秀性信頼性パフォーマンス効率
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.データベース・アプリサーバー・ホストなどスタック全体を種別ごとに監視する。
  • 2.管理エージェントで対象を自動探索し、リソースとして登録して指標を収集する。
  • 3.トポロジ表示とアラームで多層構成の障害原因を切り分けやすくする。

解決する課題

OCI Monitoring が「クラウドリソースの組み込み指標」を集めるのに対し、Stack Monitoring は「アプリケーションスタックを構成するソフトウェア層そのもの」を監視対象にします。1 つの業務アプリは Web サーバー、アプリケーションサーバー、データベース、ホスト OS といった層が積み重なって動いており、これらを横断して状態を把握しないと、ユーザー影響の原因がどの層にあるのかを切り分けられません。

  • データベースやミドルウェアのプロセス/インスタンスレベルの健全性を、ホスト指標とは別に把握したい
  • 多数のサーバーに散らばる監視対象を、**手作業ではなく自動探索(ディスカバリ)**でまとめて登録したい
  • アプリ・DB・ホストの**依存関係(トポロジ)**を踏まえて、障害の影響範囲と根本原因を切り分けたい
  • リソース種別ごとに推奨される監視指標とアラームを、ゼロから設計せず使いたい
  • オンプレミスやサードパーティクラウド上のスタックも、同じ監視基盤で扱いたい

主要概念と用語

  • 監視対象リソース(Monitored Resource): Stack Monitoring が監視する論理エンティティ。データベース 1 インスタンス、アプリケーションサーバー 1 つ、ホスト 1 台などがそれぞれリソースになる
  • リソース種別(Resource Type): 監視対象の種類。Oracle Database、各種アプリケーションサーバー、ホスト、外部 HTTP エンドポイントなど、種別ごとに収集指標やプロパティが定義される
  • ディスカバリ(Discovery): エージェントを通じて対象環境をスキャンし、稼働中のスタック構成要素を自動で見つけてリソースとして登録する処理
  • 管理エージェント(Management Agent): 監視対象ホストや近傍に導入する OCI の収集エージェント。Stack Monitoring プラグインを有効化して指標を収集・送信する
  • アソシエーション(Association/関連): リソース間の依存・包含関係。DB がどのホスト上で動くか、アプリがどの DB に依存するかといったトポロジを表現する
  • メトリクス(Metric): 各リソースから収集される時系列指標。種別ごとに推奨指標が用意され、しきい値監視に使える
  • アラームルール(Alarm Rule): 指標がしきい値条件を満たしたときに通知・状態遷移を起こす設定。OCI Monitoring のアラームと連携し、Notifications 経由で配信する
  • メンテナンスウィンドウ(Maintenance Window): 計画停止中の誤検知を避けるため、特定リソースのアラームを一時的に抑止する期間
  • OCI Observability and Management: Stack Monitoring が属する、Monitoring・Logging・APM・Database Management などを束ねる運用管理スイートの総称

仕様・制限・クォータ

  • 指標収集は管理エージェント前提: クラウドの組み込み指標と異なり、Stack Monitoring は基本的に管理エージェントの Stack Monitoring プラグインが対象に到達して収集する。エージェントの到達性とポリシーが前提条件になる
  • リソース種別ごとに収集できる指標が決まる: データベースやアプリケーションサーバーなど、サポートされる種別とその推奨指標はサービス側で定義される。任意のソフトウェアを無制限に監視できるわけではない
  • 対象のクレデンシャル管理が必要: DB など認証を要する対象は、収集用アカウントの資格情報を安全に登録して使う。OCI Vault と連携してシークレットを保護するのが基本
  • メトリクスの保持・集計はリージョン単位: 監視データはリージョン内で扱われ、長期トレンドが必要なら別途エクスポートやレポート化を設計する
  • テナンシ/リージョン単位のサービス上限: 登録できるリソース数や API レートには上限があり、大規模環境では上限引き上げをサービスリクエストで申請する
  • 具体的な保持日数・上限値・対応バージョンは更新されうるため、最新の公式ドキュメントで確認する

内部の仕組み

Stack Monitoring は「対象ソフトウェアの近くに置いたエージェントが指標を吸い上げ、OCI 側でリソースとして時系列管理する」構造です。流れは概ね次のとおりです。

  • エージェント導入: 監視対象ホスト(または到達可能な近傍)に管理エージェントを入れ、Stack Monitoring プラグインを有効化する
  • ディスカバリ: エージェントが環境をスキャンし、稼働中の DB・アプリケーションサーバー・ホストなどを検出して監視対象リソースとして登録する。検出時に依存関係(アソシエーション)も把握され、トポロジが形成される
  • 収集: 各リソース種別に定義された推奨指標を、エージェントが定期的に収集して OCI へ送信する。認証が要る対象には登録済みクレデンシャルを使う
  • 評価と可視化: 収集指標はリソース単位で時系列として保持され、トポロジ表示や種別別ダッシュボードで可視化される。アラームルールが条件成立を検知すると OCI Monitoring/Notifications を通じて通知される
Monitoring との役割分担

OCI Monitoring は「クラウドリソースの組み込み指標」を、Stack Monitoring は「その上で動くソフトウェアスタック(DB・ミドルウェア)」を主対象にします。 両者は競合せず、Stack Monitoring のアラームは内部で Monitoring/Notifications の仕組みに乗ります。スタック全体を見るときは、両方を組み合わせて層ごとに役割分担させるのが基本です。

設計パターン / ベストプラクティス

  • エージェントの自動探索を起点にする: 手動登録ではなくディスカバリで対象を洗い出し、登録漏れと属人的な構成管理を避ける
  • トポロジで根本原因を辿る: アプリ遅延が DB 起因かホスト起因かを、アソシエーションをたどって切り分ける。アラームは依存元と依存先の両方に設計する
  • 種別ごとの推奨指標を採用する: 各リソース種別の推奨指標とアラームテンプレートをまず採用し、必要に応じて固有のしきい値へ調整する
  • メンテナンスウィンドウで誤検知を抑える: 計画パッチ・再起動の時間帯はアラームを抑止し、通知疲れと無駄なオンコールを防ぐ
  • 通知は OCI Monitoring/Notifications に集約: Stack Monitoring 由来のアラームも同じトピックに集約し、Email/PagerDuty/Slack/Functions へ一元配信する
  • APM・Database Management と併用: リクエスト経路の遅延は APM、DB の詳細チューニングは Database Management、層の健全性は Stack Monitoring、と観測スイート内で補完させる

運用・監視

  • 指標が出ない: 対象ホストの管理エージェントと Stack Monitoring プラグインが有効か、エージェントが OCI エンドポイントへ到達できるネットワーク/プロキシ/ポリシーかを確認する
  • ディスカバリで対象が見つからない: 収集用クレデンシャルの権限不足、対象プロセスの稼働状態、エージェントから対象への到達性(ポート・認証)を点検する
  • アラームが鳴らない/鳴りすぎる: しきい値と評価条件、対象リソースの選択範囲、メンテナンスウィンドウの設定有無を確認する
  • 通知が届かない: 連携先 Notifications トピックのサブスクリプションが確認済みか、IAM ポリシーで publish が許可されているかを確認する
  • クレデンシャルの失効: DB 等の収集用パスワードをローテーションしたら、Vault のシークレットと登録情報を更新する。失効すると収集が静かに止まる点に注意

コスト

Stack Monitoring の課金は概ね監視対象リソースの数や監視時間に応じて発生し、エージェント自体の利用やディスカバリ機能は管理エージェントの枠組みで提供されます。監視対象を増やすほど費用が増えるため、本番クリティカル層を優先し、検証環境は監視を絞る/停止するなどメリハリを付けるのがコスト最適化の基本です。具体的な単価は変動するため、最新の料金ページで確認してください。

使っていない対象を放置しない

ディスカバリは便利な反面、検証用や退役済みの対象まで監視リソースとして登録され続け、無駄な課金とノイズアラートを生みがちです。 不要になったリソースは登録解除し、環境のライフサイクルに合わせて棚卸しする運用を組み込みます。

セキュリティ

  • 収集クレデンシャルは Vault で保護: DB 等への収集用アカウントのパスワードはコードや設定ファイルに直書きせず、OCI Vault のシークレットとして管理しローテーションする
  • IAM ポリシーで最小権限: リソースの登録・閲覧、エージェント管理、アラーム管理を、必要なグループ/動的グループにのみ付与する
  • 動的グループ+インスタンスプリンシパル: エージェントを動かすインスタンスは長期キーを埋め込まず、インスタンスプリンシパルで OCI へ認証させる
  • 収集用アカウントは読み取り中心の最小権限: 監視のための DB/ミドルウェアアカウントは、必要な性能ビューの参照に絞り、書き込み権限を与えない
  • 監査との役割分担: 「スタックがどんな状態か」は Stack Monitoring、「誰が何を操作したか」は OCI Audit が担う。混同しない
アンチパターン

監視対象 DB の収集用パスワードを、エージェント設定やスクリプトに平文でハードコードするのは NG。 OCI Vault のシークレット参照に切り替えれば、鍵の集中管理・ローテーション・漏洩時の無効化をまとめて行えます。

関連サービス・比較

最も近いのは OCI Monitoring です。Monitoring が「クラウドリソースの組み込みメトリクスとアラームの土台」であるのに対し、Stack Monitoring は「その上で動く DB・ミドルウェアなどソフトウェア層を、自動探索とトポロジ付きで監視する」レイヤーを担います。両者は同じ Observability and Management スイート内で補完し合います。

観点OCI Stack MonitoringOCI Monitoring
主な監視対象DB・ミドルウェア・アプリ層などスタッククラウドリソースの組み込み指標
対象の登録方法エージェントによる自動探索(ディスカバリ)サービスが自動発行/カスタム送信
指標収集の前提管理エージェントのプラグインが収集サービス側が自動発行(OS内部はエージェント)
依存関係の可視化トポロジ(アソシエーション)を持つディメンションでの絞り込みが中心
アラーム・通知アラームルール(内部でMonitoring/ONS連携)アラームからNotificationsへ
近い他クラウドCloudWatch Application Insights に近いAmazon CloudWatch に相当

ハンズオン / CLI例

# 1) 監視対象リソースの一覧を取得(コンパートメント内)
oci stack-monitoring monitored-resource list \
  --compartment-id "$COMPARTMENT_OCID"

# 2) 特定の監視対象リソースの詳細を確認
#    指標やプロパティ、関連(アソシエーション)を把握する
oci stack-monitoring monitored-resource get \
  --monitored-resource-id "$RESOURCE_OCID"

# 3) ホストなどの監視対象リソースを手動登録する例
#    認証が要る対象は Vault のシークレットを参照する設計にする
oci stack-monitoring monitored-resource create \
  --compartment-id "$COMPARTMENT_OCID" \
  --name "app-host-01" \
  --type "host" \
  --management-agent-id "$MGMT_AGENT_OCID"

# 4) リソース間の関連(依存関係)を作成し、トポロジを表現
oci stack-monitoring monitored-resource-association create \
  --compartment-id "$COMPARTMENT_OCID" \
  --association-type "depends_on" \
  --source-resource-id "$APP_RESOURCE_OCID" \
  --destination-resource-id "$DB_RESOURCE_OCID"

OCI Service

OCI Stack Monitoringを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

監視・オブザーバビリティ

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: 監視・オブザーバビリティ / 難易度: intermediate

導入後に効く点

管理エージェントで対象を自動探索し、リソースとして登録して指標を収集する。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
監視・オブザーバビリティ
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
operational / reliability / performance

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「監視・オブザーバビリティ / operational」に近いか確認する。
  • 強みである「データベース・アプリサーバー・ホストなどスタック全体を種別ごとに監視する。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

監視・オブザーバビリティoperationalreliabilityperformance