TL

Cloud Service

OCI IAM with Identity Domains

ユーザー・グループ・MFA・SSO・フェデレーションを束ねる OCI 内蔵の IDaaS。OCI コンソールと業務アプリの両方のサインインを一元管理でき、旧 Identity Cloud Service の後継。Microsoft Entra ID 相当。

中級セキュリティ運用上の優秀性
最終更新: 2026-06-28公式ドキュメント ↗
TL;DR要点だけ先に
  • 1.ユーザー・グループ・MFA・サインオンポリシーを束ねる OCI 内蔵の ID 基盤。
  • 2.OCI 操作の認証だけでなく業務アプリの SSO やフェデレーションも担う。
  • 3.テナンシ内に複数ドメインを作り、用途や組織ごとに ID 空間を分離できる。

解決する課題

  • OCI コンソールへのログインと業務アプリへのログインを別々の ID 基盤で管理したくない → 一つの ID 基盤に集約したい
  • 管理者やユーザーに**多要素認証(MFA)**を強制し、パスワードだけのログインをやめたい
  • 既存の社内 IdP(Microsoft Entra ID など)の ID を OCI でも使い、重複したアカウント管理をなくしたい
  • 組織・環境・顧客テナントごとに ID 空間を分離し、ユーザーやポリシーが混ざらないようにしたい
  • SaaS や自社アプリへのログインを **SSO(シングルサインオン)**でまとめ、利用者のパスワード数を減らしたい

主要概念と用語

  • アイデンティティドメイン(Identity Domain): ユーザー・グループ・認証設定・アプリ登録を束ねる ID 空間の入れ物。OCI に内蔵された IDaaS であり、旧 Oracle Identity Cloud Service(IDCS)の後継。テナンシ内に複数作成できる
  • Default ドメイン: テナンシ作成時に自動で用意されるドメイン。OCI コンソール/API の認証に使われる既定の ID 空間
  • ユーザー / グループ: ドメインに属する ID と、その束。OCI の権限(IAM ポリシー)はこのグループに対して付与する
  • サインオンポリシー(Sign-On Policy): 誰が・どんな条件でサインインを許可/拒否されるか、MFA を要求するかを定義するルール
  • MFA(多要素認証): パスワードに加えて認証アプリ・FIDO・SMS などの第二要素を要求する仕組み。ドメイン単位で方式を有効化する
  • フェデレーション(Federation): 外部 IdP に認証を委ねる連携。SAML 2.0 / OpenID Connect に対応し、社内の認証基盤に ID を寄せられる
  • アプリ(Application): ドメインに登録する SSO 対象のアプリケーション。OAuth/OIDC クライアントや SAML サービスプロバイダーとして構成する
  • プロビジョニング / SCIM: 外部システムとユーザー情報を同期する仕組み。SCIM 標準でユーザーの作成・更新・削除を自動連携する
  • ブランディング: サインイン画面のロゴ・配色・文言などをドメインごとにカスタマイズする設定

仕様・制限・クォータ

  • アイデンティティドメインは OCI IAM の一部であり、ドメインに属するユーザー・グループに対して IAM ポリシーで OCI リソースのアクセス権を付与する。「ID の管理」と「OCI の認可」は連動している
  • テナンシには Default ドメインが必ず存在し、追加で複数ドメインを作成できる。各ドメインは独立した ID 空間で、ユーザー・グループ・サインオンポリシーを共有しない
  • ドメインには**タイプ(機能レベル)**があり、OCI 操作向けの基本機能を提供する無償タイプと、外部アプリ SSO や大規模 ID 管理などを含む上位タイプに分かれる。利用できる機能と課金はタイプに依存する
  • フェデレーションは SAML 2.0 と OpenID Connect に対応し、Microsoft Entra ID・Okta・Active Directory フェデレーションなど外部 IdP と連携できる
  • 認証連携の標準として OAuth 2.0 / OIDC / SAML / SCIM をサポートし、アプリ SSO とユーザープロビジョニングを標準プロトコルで構成する
  • ドメインは作成時にリージョンを持つ。利用形態に応じて他リージョンへレプリケーションする運用が可能だが、対応範囲はドメインタイプにより異なる
  • ユーザー数・アプリ数・グループ数などにはサービス上限があり、ドメインタイプやテナンシ既定で異なる。具体値は変動するため公式ドキュメントで都度確認する

内部の仕組み

アイデンティティドメインは、認証(ユーザーが本人か)と ID 管理(誰がどのグループに属するか)を担い、OCI IAM の認可エンジンと連携します。ユーザーが OCI コンソールやアプリにサインインしようとすると、ドメインはサインオンポリシーを評価し、対象ユーザー・ネットワーク・デバイスなどの条件に応じてサインインの許可・拒否・MFA 要求を決定します。

外部 IdP とフェデレーションしている場合、ドメインは自前でパスワードを検証せず、SAML アサーションや OIDC トークンを外部 IdP から受け取って本人性を確認します。SSO 対象のアプリに対しては、ドメインが IdP(または認可サーバー)として振る舞い、OIDC のトークンや SAML アサーションを発行してアプリへのログインを成立させます。SCIM によるプロビジョニングが構成されていれば、ユーザーの作成・更新・無効化が外部システムと自動同期されます。

認証が済んだユーザーが OCI リソースを操作するときは、所属グループに紐づく **IAM ポリシー(Allow 文)**が評価され、許可された操作だけが通ります。つまりドメインが「誰か」を確定し、IAM ポリシーが「何をできるか」を決める分担です。

IAM ポリシーとサインオンポリシーは別物

IAM ポリシーは「どのグループが・どのコンパートメントの・何に・何をできるか」という OCI リソースへの認可ルールです。一方サインオンポリシーは「誰が・どんな条件でサインインできるか/MFA を要求するか」という認証時のルールです。役割が異なるので、両方を設計する必要があります。

設計パターン / ベストプラクティス

  • ドメインで ID 空間を分離: 本番と検証、社内向けと顧客向け(B2B/B2C)など、混ぜたくない ID 集合は別ドメインに分ける。ユーザーもサインオンポリシーも分離される
  • 管理者には MFA を必須化: 特権ユーザーのサインオンポリシーで MFA を強制し、認証アプリや FIDO などフィッシング耐性の高い要素を優先する
  • 権限はグループに、人は直接持たせない: OCI の権限はグループ単位で IAM ポリシーから付与し、人の入れ替えはグループのメンバー変更で対応する
  • 既存 IdP にフェデレーション: 社内に Entra ID 等があるなら SAML/OIDC で連携し、人の ID とパスワードを社の認証基盤に一元化する
  • SCIM で自動プロビジョニング: 入退社に合わせてユーザーの作成・無効化を自動化し、休眠アカウントの放置を防ぐ
  • アプリ SSO の集約: 自社アプリや SaaS をドメインのアプリとして登録し、利用者のパスワード数とログイン手間を減らす

運用・監視

  • ドメインの認証・管理操作は OCI Audit に記録され、誰がいつサインイン設定やユーザーを変更したかを追跡できる
  • ドメインはサインインの成否やユーザーアクティビティのレポートを持ち、不審なログインやロックアウトの傾向を確認できる
  • サインインに失敗する場合は、サインオンポリシーの条件・MFA 登録状況・フェデレーション連携先(IdP)の状態の順に切り分ける
  • 外部 IdP 連携では、証明書やメタデータの有効期限を監視し、期限切れによる一斉ログイン不能を防ぐ
  • ユーザーやグループの増減、休眠アカウントを定期棚卸しし、SCIM 連携の整合性を点検する

コスト

アイデンティティドメインは OCI 操作のための認証認可(基本機能・MFA・基本フェデレーション)が追加料金なしで使える無償タイプを持ちます。外部アプリの SSO や大規模 ID 管理などの高度な機能を使う上位タイプは、ユーザー規模に応じた課金になります。

項目課金の考え方コスト最適化のヒント
無償タイプ追加料金なしOCI コンソール/API の認証・MFA・基本フェデレーションはここで足りることが多い
上位タイプユーザー規模に応じた課金外部アプリ SSO や高度な ID 管理が要る範囲だけ上位にする
ドメイン数ドメイン自体ではなくタイプと利用に依存むやみに上位タイプを増やさず用途で分ける
MFA/サインオンポリシー基本機能の範囲で利用可能管理者から優先的に MFA を有効化する

正確な料金体系はドメインタイプ・ユーザー数・リージョンで変動するため、見積もりは公式の料金情報で確認してください。

セキュリティ

  • MFA を強制: サインオンポリシーで多要素認証を必須化し、特に管理者にはフィッシング耐性の高い要素を優先する
  • 条件付きアクセス: サインオンポリシーで送信元ネットワークやデバイスの条件を設定し、想定外の場所からのサインインを抑止する
  • フェデレーションで認証を一元化: 外部 IdP に認証を寄せ、ID とパスワードの管理点を一つにしてアカウントの分散を防ぐ
  • 最小権限のグループ設計: ドメインのグループに対して IAM ポリシーで必要最小限の権限だけを与え、過剰な管理権限を避ける
  • 監査と棚卸し: OCI Audit でサインイン設定の変更を追跡し、休眠アカウントや過剰権限を定期的に見直す
アンチパターン

管理者アカウントをパスワードのみ・MFA なしで運用するのは重大なリスクです。特権ユーザーには必ず MFA を要求してください。また、ユーザーごとに ID を個別管理して社内 IdP とフェデレーションしないと、退職者のアカウント無効化漏れが起きやすくなります。可能なら外部 IdP 連携と SCIM プロビジョニングで自動化してください。

関連サービス・比較

最も近い関連サービスは OCI IAM のポリシーエンジンです。アイデンティティドメインが「誰か(認証・ID 管理)」を担い、IAM ポリシーが「何をできるか(認可)」を担う、という分担関係にあります。

観点アイデンティティドメインIAM ポリシー
主な役割認証・ID 管理・SSO・MFAOCI リソースへの認可
扱う対象ユーザー・グループ・サインオンコンパートメントとリソース種別への許可
記述方法サインオンポリシーと連携設定Allow 文(許可のみ)
外部連携SAML/OIDC/SCIM フェデレーション条件 where で属性を縛る
相当(他クラウド)Entra ID / IAM Identity CenterAWS IAM のポリシー

他クラウドで例えると、アイデンティティドメインは Microsoft Entra IDAWS IAM Identity Center に近い ID 基盤で、SSO・MFA・フェデレーションを担います。OCI ではこれが IAM に内蔵され、OCI リソースへの認可(Allow ポリシー)とシームレスに連動する点が特徴です。

ハンズオン / CLI例

# 1) テナンシ内のアイデンティティドメイン一覧を確認
oci iam domain list \
  --compartment-id $OCI_TENANCY

# 2) 新しいドメインを作成(用途や組織ごとに ID 空間を分離)
#    --license-type にはドメインのタイプ(機能レベル)を指定する
oci iam domain create \
  --compartment-id $OCI_TENANCY \
  --display-name partner-b2b \
  --description "Identity domain for partner B2B users" \
  --home-region-url $DOMAIN_HOME_REGION_URL \
  --license-type "premium"

# 3) ドメインのエンドポイント(管理 URL)を確認
oci iam domain get \
  --domain-id $DOMAIN_OCID

# 4) ドメイン内のユーザーは Identity Domains 専用 API で管理する
#    (SCIM ベースの users エンドポイント)
oci identity-domains user list \
  --endpoint $DOMAIN_URL

# 5) ドメイン内にグループを作成(OCI 権限はこのグループへ IAM ポリシーで付与)
oci identity-domains group create \
  --endpoint $DOMAIN_URL \
  --display-name app-readers \
  --schemas '["urn:ietf:params:scim:schemas:core:2.0:Group"]'

OCI Service

OCI IAM with Identity Domainsを実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

セキュリティ・ID

比較で見る軸

クラウド: OCI / カテゴリ: セキュリティ・ID / 難易度: intermediate

導入後に効く点

OCI 操作の認証だけでなく業務アプリの SSO やフェデレーションも担う。

先に潰すリスク

サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。

数字・仕様の読み方
クラウド
OCI
カテゴリ
セキュリティ・ID
難易度
intermediate
関連資格
設計柱
security / operational

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「セキュリティ・ID / security」に近いか確認する。
  • 強みである「ユーザー・グループ・MFA・サインオンポリシーを束ねる OCI 内蔵の ID 基盤。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「サービス単体ではなく、権限、ネットワーク、監視、課金、バックアップを含めて設計する必要がある。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

セキュリティ・IDsecurityoperational