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キルヒホッフの法則と回路解析:節点法・網目法の数理

どんなに複雑な回路でも、節点法・網目法という機械的な手順で連立方程式に落とし込めます。KCL/KVLの数理的根拠から行列表現、テブナン等価までを一本で理解できます。

応用キルヒホッフの法則回路解析節点法網目法テブナンの定理線形回路最終更新: 2026-06-21
TL;DR要点だけ先に
  • 1.KCLは電荷保存、KVLはエネルギー保存(電界の保存性)に由来し、両者で回路は一意に解ける連立一次方程式になる。
  • 2.節点電位法は未知数を節点電位に、網目電流法は未知数を網目電流に取り、いずれも行列 G・v=i や R・i=v の形に整理できる。
  • 3.重ね合わせ・テブナン/ノートン等価は、線形回路の性質を使って解析対象を縮約する道具で、節点法・網目法と相補的に働く。

任意回路を「解ける」ものにする2法則

オームの法則(/power/circuit-fundamentals/)だけでは、分岐とループが入り組んだ回路は解けません。素子の数だけ未知の電流・電圧があり、V = I・R は素子1つの関係しか与えないからです。残りの方程式を供給するのが キルヒホッフの2法則 です。これらは回路を、未知数の数だけ式を持つ連立一次方程式へと変換し、原理的に必ず一意の解を持たせます。

法則対象内容由来する保存則
電流則 KCL節点(ノード)節点へ流入する電流の総和は 0電荷保存(電荷は溜まらない)
電圧則 KVL閉路(ループ)閉路を一周した電位差の総和は 0エネルギー保存(電界の保存性)

なぜ KCL・KVL が成り立つのか

KCL(電流則)の根拠は電荷保存 です。節点は理想的に体積を持たない接続点なので、そこに電荷を溜め込むことができません。流入した電荷は同じ瞬間にすべて流出するしかなく、流入を正・流出を負とすれば総和は 0 になります。これは時間によらず常に成立する瞬時の法則です。

KVL(電圧則)の根拠は電位の一価性、すなわち電界の保存性 です。電位はある基準点からの「単位電荷あたりの位置エネルギー」として各点に一意に定まります。ループを一周して出発点に戻れば、当然もとの電位に戻る ── つまり上り下りした電位差の総和は 0 でなければなりません。標高を一周すれば必ず元の高さに戻るのと同じ理屈です。

KVL が破れる場面 ── 時間変化する磁場

KVL は「電界が保存場である」ことに依存します。ところがファラデーの法則により、ループを貫く磁束が時間変化すると起電力が誘導され、閉路一周の電位差の総和はゼロでなく誘導起電力に等しくなります。インダクタを含む回路でも、磁束変化を素子の端子電圧(v = L・di/dt)として閉路に取り込めば KVL は形式上保たれますが、配線ループが外部磁場を拾う場合は別途モデル化が要ります。準静的近似が成り立つ範囲で初めて、素朴な KVL が使えます。

独立な式は何本立つか ── グラフ理論の数え上げ

闇雲に式を立てると、互いに従属した方程式ができて解けません。ノード数 n、ブランチ(枝=素子)数 b の回路では、独立な式の本数がグラフ理論で決まります。

独立な KCL の本数 = n - 1
  (全 n 節点のうち、どれか1つは基準とし残りで独立。
    全節点で立てると総和が恒等的に 0 になり1本従属する)

独立な KVL の本数 = b - (n - 1) = b - n + 1
  (= 独立な閉路の数。グラフの「基本閉路」の数に等しい)

合計 (n-1) + (b-n+1) = b 本
  → 未知のブランチ電流 b 個に対し式が b 本そろい、解は一意。

この数え上げが、後述の節点法・網目法でちょうど過不足ない数の方程式を立てる根拠です。

節点電位法 ── 未知数を「電位」に取る

節点電位法(ノード解析)は、未知数を各節点の電位に取り、各節点で KCL を立てる方法です。手順は機械的です。

  1. 任意の1節点を基準(0 V のグラウンド)に選ぶ。
  2. 残り n - 1 個の節点電位を未知数 v1, v2, … とする。
  3. 各節点で「出ていく電流の総和 = 0」を KCL で書く。枝電流はオームの法則で電位差を使って表す(例: ノード1からノード2へ流れる電流は (v1 - v2)・G、G はコンダクタンス 1/R)。

抵抗だけの線形回路なら、これは必ず次の行列形式に整理できます。

G・v = i_src

  G : (n-1)×(n-1) のコンダクタンス行列
  v : 未知の節点電位ベクトル
  i_src : 各節点へ流れ込む電流源の寄与ベクトル

G の作り方(by inspection、目視で書ける):
  対角 G[k][k] = 節点 k に接続する全コンダクタンスの和
  非対角 G[j][k] = -(節点 j と k を直結するコンダクタンスの和)

G は対称行列になり(相反性)、v = G⁻¹・i_src で全節点電位が一気に求まります。電流源が支配的で節点が多い回路に向き、SPICE 系シミュレータの内部でも修正節点解析(MNA)として中核を担います。

網目電流法 ── 未知数を「ループ電流」に取る

網目電流法(メッシュ解析)は、未知数を各網目を循環する仮想的なループ電流に取り、各網目で KVL を立てる方法です。平面回路(交差なく描ける回路)の「窓」1つ1つが網目で、その数はちょうど独立閉路数 b - n + 1 に一致します。

  1. 各網目に時計回りなどの向きでループ電流 i1, i2, … を割り当てる。
  2. 各網目で「一周の電圧降下の総和 = 起電力」を KVL で書く。
  3. 枝を共有する隣接網目では、その枝の実際の電流は2つのループ電流の差になる点に注意する。
R・i = v_src

  R : (b-n+1)×(b-n+1) の抵抗行列
  i : 未知の網目電流ベクトル
  v_src : 各網目内の起電力の総和ベクトル

R の作り方(by inspection):
  対角 R[k][k] = 網目 k を構成する全抵抗の和
  非対角 R[j][k] = -(網目 j と k が共有する抵抗)

節点法の G・v=i と網目法の R・i=v は 完全に双対 の構造を持ちます。電圧源が支配的でループが少ない回路では網目法のほうが未知数が減り有利です。どちらを選んでも同じ解に到達するので、未知数が少なくなるほうを選ぶのが定石です。

どちらの手法を選ぶか

未知数の数 = 立てる方程式の数なので、n - 1(節点法)と b - n + 1(網目法)を比べて小さいほうを選ぶと計算量が減ります。電流源が多ければ節点法、電圧源が多ければ網目法が素直です。なお網目法は平面回路を前提とし、立体的に交差する非平面回路では一般化したループ解析が必要になります。節点法にはその制約がなく、より汎用的です。

重ね合わせの理 ── 線形性を使って分解する

回路が線形(抵抗・線形従属源のみで、応答が入力に比例)なら、重ね合わせの理 が使えます。複数の独立電源がある回路の任意の枝の電流・電圧は、各電源を1つずつ単独で働かせたときの応答の総和に等しい、という定理です。

電源を1つ残し、他を「殺す」:
  電圧源を殺す → 短絡(0 V = 導線で置換)
  電流源を殺す → 開放(0 A = 切断で置換)

各単独応答を求め、最後に代数和を取る。
  ※ 電力は I²R で電流の2乗に依存するため重ね合わせ不可。
    電力は最終的に合成した電流から計算すること。

電源が多いと手間は増えますが、各サブ問題が単純化されるため、特定の枝の寄与だけを切り分けたいときに強力です。

テブナン/ノートン等価 ── 回路を2素子に縮約する

着目する2端子の外から見れば、その内側にどれだけ複雑な線形回路があっても、1つの電源と1つの抵抗 で完全に置き換えられます。これがテブナン/ノートンの定理で、負荷を取り替えながら繰り返し解析する場面で絶大な効果を発揮します。

等価回路構成電圧源/電流源直列/並列抵抗
テブナン等価電圧源 + 直列抵抗Vth = 端子の開放電圧Rth = 電源を殺した内部抵抗
ノートン等価電流源 + 並列抵抗In = 端子の短絡電流Rn = Rth と同一
求め方の手順:
  Vth … 負荷を外し、端子間の開放電圧を測る(節点法等で算出)
  In  … 端子を短絡し、流れる短絡電流を求める
  Rth … 全独立電源を殺し、端子から見込んだ抵抗
        (または Rth = Vth / In)

両者は相互変換でき:Vth = In・Rth

テブナン抵抗は 最大電力供給の整合(負荷抵抗を Rth に等しくすると負荷へ渡る電力が最大)の基礎にもなります。なお、この縮約は線形回路でのみ厳密に成立します。ダイオードなど非線形素子を含む部分は、動作点まわりで線形化(小信号近似)して初めて等価回路が描けます。

交流・一般化への接続

ここまでは抵抗のみの直流回路で論じましたが、KCL/KVL・節点法・網目法・テブナン等価は そのまま交流回路へ一般化 できます。抵抗 R をインピーダンス Z(複素数)に、コンダクタンス G をアドミタンス Y に置き換えるだけで、G・v=iY・v=iR・i=vZ・i=v という複素連立方程式になります。フェーザとインピーダンスによるこの拡張は /power/ac-impedance-phasor/ で扱い、そこで得た電圧・電流の位相差が力率(/power/power-factor-reactive-power/)として効いてきます。

まとめ

  • KCL は電荷保存、KVL は電位の一価性(電界の保存性) に由来し、両者で回路は未知数の数だけ式を持つ連立一次方程式になり、解は一意に定まる。
  • 独立な式は KCL が n-1 本、KVL が b-n+1 本で、合計 b 本がブランチ電流 b 個とちょうど釣り合う。
  • 節点電位法は未知数を節点電位に取り G・v=i網目電流法はループ電流に取り R・i=v に整理でき、両者は双対。未知数の少ないほうを選ぶ。
  • 重ね合わせの理 で電源ごとに分解し、テブナン/ノートン等価 で複雑な線形回路を電源1つ+抵抗1つに縮約できる(いずれも線形性が前提)。
  • これらの手法は R を Z に置き換えるだけで交流(/power/ac-impedance-phasor/)へ一般化され、回路解析全体の土台となる。

電源 Article

キルヒホッフの法則と回路解析:節点法・網目法の数理を実務で読む

TL;DRは入口です。実際に選ぶ・使う段階では、何を解決するか、何と比較するか、導入後にどこで詰まるかまで見る必要があります。

解決すること

キルヒホッフの法則

比較で見る軸

難易度: advanced / カテゴリ: 電源 / タグ数: 6

導入後に効く点

節点電位法は未知数を節点電位に、網目電流法は未知数を網目電流に取り、いずれも行列 G・v=i や R・i=v の形に整理できる。

先に潰すリスク

用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。

数字・仕様の読み方
難易度
advanced
カテゴリ
電源
タグ数
6

判断チェックリスト

  • 自社の用途が「キルヒホッフの法則 / 回路解析」に近いか確認する。
  • 強みである「KCLは電荷保存、KVLはエネルギー保存(電界の保存性)に由来し、両者で回路は一意に解ける連立一次方程式になる。」が本当に評価軸になるか確認する。
  • 注意点の「用語だけ覚えても、設計・実装・運用でどこに効くかを確認しないと判断を誤る。」を運用で吸収できるか確認する。
  • 公開値や仕様値は、対象プラン・対象機種・対象リージョンまで確認する。
  • 既存システム、ID、ネットワーク、監視、バックアップとの接続方法を先に洗い出す。
  • 小さく試してから、本番移行、権限設計、障害時手順、コスト監視を決める。

次に確認する観点

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